白癬(読み)はくせん(英語表記)tinea; ringworm

  • (皮膚の病気)
  • しらくぼ
  • しらくも
  • 白×癬
  • 白×癬/白禿=瘡
  • 白癬(真菌症)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

真菌の一種である白癬菌感染による皮膚疾患。感染部位により浅在性白癬と深在性白癬に大別される。浅在性白癬は,有毛部を侵した場合,境界鮮明でしばしば円形病変が生じて遠心性に拡大し,中心部は治癒傾向がある。無毛部を侵した場合の病態は多様で,頭部浅在性白癬 (しらくも) ,股部白癬 (いんきんたむし) ,足白癬 (水虫) ,小水疱性斑状白癬 (ぜにたむし) ,爪白癬などがこれに属す。深在性白癬は病変が真皮にまで及んで腫瘤を形成するものであるが,まれである。

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デジタル大辞泉の解説

小児の頭部に、大小の円形の白色落屑(らくせつ)面ができる皮膚病。白癬(はくせん)菌が感染して起こる。かゆみがあり、毛髪が脱落する。頭部白癬。しらくぼ。
白癬菌などの一群糸状菌の感染によって起こる皮膚病。頭部白癬(しらくも)・体部白癬(たむし)・頑癬(がんせん)(いんきんたむし)・足白癬(みずむし)・手白癬・爪白癬などがある。
しらくも(白癬)」に同じ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

皮膚糸状菌(一種のカビ)に感染しておこる皮膚病である。白癬の病原菌は皮膚糸状菌と総称され、分類上は真菌類の不完全菌類に属し、白癬菌、小胞子菌、表皮菌の3属からなっている。白癬は病変の深さによって浅在性白癬と深在性白癬に分けられ、前者は表皮、毛髪、爪(つめ)など皮膚の表面に病変を生ずるもの、後者は毛包(毛嚢(もうのう))などから菌が真皮内に侵入して病変を生ずるものをいう。浅在性白癬には、頭部白癬、斑(はん)状小水疱(すいほう)性白癬、頑癬(がんせん)、汗疱(かんぽう)状白癬、爪(そう)白癬があり、深在性白癬には、ケルスス禿瘡(とくそう)、白癬性(または寄生菌性)毛瘡、白癬性肉芽腫(にくがしゅ)がある。また白癬菌あるいはその毒素の作用によって、アレルギー性に全身の広い範囲にわたって丘疹(きゅうしん)、紅斑などの発疹を生ずるものを白癬疹という。白癬疹は深在性白癬と合併して生ずることが多いが、浅在性白癬でも症状の激しいときに現れることがある。(1)頭部白癬(しらくも) 小児に好発し、頭部に爪甲大の境界明瞭(めいりょう)な円い白く粉をふいたような病変が多発し、病変部の毛髪は色があせて短く折れたり抜けやすくなり、毛がまばらになる。かゆみはほとんどない。(2)斑状小水疱性白癬(ぜにたむし) 躯幹(くかん)や四肢に境界明瞭な円い紅斑を生じ、その縁に小水疱が並び、円く四方に広がるとともに、中心部は治って正常の皮膚となる。ときに同心円状の紅色輪が生ずることがあり、かゆみを伴う。(3)頑癬(いんきんたむし) 股(また)の付け根の部分や臀部(でんぶ)に好発し、境界明瞭な円弧状の紅斑を生じ、その縁には小水疱や丘疹が並び、その内側の皮膚は褐色に色がつき、鱗屑(りんせつ)や痂皮(かひ)(かさぶた)がみられ、かゆみが激しい。(4)汗疱状白癬(水虫) 手のひら、足の裏、足の指の間に生じ、臨床上、小水疱型、角化型、趾間(しかん)型の三型に分けられる。小水疱型は小水疱と落屑(らくせつ)(皮がはがれ落ちる)を生ずるもの、角化型は皮膚が全体に厚く硬くなってわずかに皮のはがれるもの、趾間型は足の指の間の皮膚が白くふやけて皮がはがれたり、ただれたりするもので、いずれもかゆみがある。(5)爪白癬 汗疱状白癬に合併することが多く、爪甲が混濁、変形してもろくなる。(6)ケルスス禿瘡 小児の頭に軟らかく盛り上がった腫(は)れ物を生じ、毛が抜けやすく、圧迫すると軽い痛みがあり、毛孔から膿汁(のうじゅう)が排出される。頸部(けいぶ)のリンパ節がはれることが多い。(7)白癬性毛瘡 成人男子の口ひげやあごひげの部分に盛り上がった紅色の腫れを生じ、毛孔に一致して膿(うみ)をもち、毛は抜けやすくなる。(8)白癬性肉芽腫 きわめてまれで、全身の白癬に合併してエンドウ豆大くらいの紅色の結節を生じ、化膿が進むとぶよぶよする。

 白癬の診断上重要なことは、病変部に糸状菌を証明することで、水疱膜、鱗屑、毛、爪などの顕微鏡検査や培養による検査を行う。白癬に似た皮膚病は多いので、その鑑別には菌の検査が必要である。白癬以外の疾患に白癬の薬を使うとかえって症状を悪化させる。また白癬に副腎(ふくじん)皮質ホルモン外用剤を使うと、典型的な症状が隠されて広がることが多い。白癬の治療にはグリセオフルビンの内服と抗真菌剤の外用が行われる。グリセオフルビンの内服は爪白癬、角化型汗疱状白癬および深在性白癬に用いられるが、その他の浅在性白癬には外用抗真菌剤のみの治療で十分である。外用抗真菌剤には昔から多くのものが使用されているが、それぞれ一長一短があるので、薬剤の選択は皮膚科専門医の指示によることが望ましい。予防としては、皮膚の衛生、とくに清潔と乾燥に留意し、肌着や靴下は乾燥した清潔なものを使用し、靴下、スリッパ、サンダル、足ふきなどは患者と共用しないよう注意する。

[野波英一郎]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 糸状菌によって起こる皮膚病。みずむし、しらくも、いんきんたむしなど。
※ナポレオンと田虫(1926)〈横光利一〉二「湿疹性の白癬は、全図を拡げて猛然と活動を開始した」 〔山海経‐中山経〕

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内科学 第10版の解説

(1)白癬(Tinea)
定義・概念
 皮膚糸状菌の白癬菌が表皮角層,毛や爪の角質内に寄生して生ずる.免疫抑制状態時などに真皮に寄生して白癬性肉芽腫を形成することがごくまれにある.足白癬が多い.
病原菌
 白癬菌でありTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesが白癬の90%以上を占める.ほかにMicrosporum canis(ペット感染に多い),M. gypseum,T. violaceum, T. tonsurans(近年格闘技競技者に感染例が多い),Epidermophyton floccosumなどがある.
病型・臨床症状(図4-14-4)
 足白癬には,小水疱鱗屑型(汗疱状白癬),趾間型(趾間白癬),角質増殖型がある.体部では辺縁が堤防状に隆起する輪状,連圏状を呈する(体部白癬).股部白癬(頑癬)は中心治癒傾向のある湿疹様局面で,辺縁は連圏状を示す.学齢期男児の頭部が侵されると,境界明瞭な円形鱗屑局面を生じ,毛は折れやすくまた抜けやすい.さらに白癬菌が毛囊深く侵入すると化膿性炎症を伴って脱毛局面を形成する(ケルスス禿瘡,kerion celsi).須毛部(口囲や顎の髭)に侵入すると扁平化膿性局面,毛包性膿瘍を形成し,毛は抜けやすく,脱落する(白癬菌性毛瘡).爪では白,黄褐色混濁・肥厚・脆弱化をきたす(爪白癬).なお,副腎皮質ステロイド外用薬の誤用などによって顔面・体部の白癬の炎症性変化が抑制され,環状病変や中心治癒傾向がはっきりしない非定型的白癬がしばしばみられる(異型白癬).
診断・治療(図4-14-5)
 病変部の角質,毛などを水酸化カリウムで溶解し直接鏡検して菌要素を確認すれば,診断できる.菌種の同定をするために培養することもある.
 治療は抗真菌薬を外用する場合が多い.角質増殖の強い例,爪白癬,毛囊への侵入例ではテルビナフィン・イトラコナゾールの内服.皮膚の乾燥,清潔保持を心がける.[大塚藤男]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)白癬菌(はくせんきん))が皮膚に感染して起こる病気です。病変の部位により、足白癬(あしはくせん)水虫)、爪白癬(つめはくせん)爪の水虫)、手白癬(てはくせん)手の水虫)、体部白癬(たいぶはくせん)ゼニたむし)、股部白癬(こぶはくせん)いんきんたむし)、頭部白癬(とうぶはくせん)しらくも)、ケルスス禿瘡(とくそう)などに分類されます。皮膚科では比較的多い病気で、外来の患者さんの10~15%を占めます。

原因は何か

 原因あるいは誘因として各病型に共通していることは、感染の機会が多いこと、高温、多湿などの環境因子、不潔、多汗などの皮膚の問題、長靴・安全靴の着用などの生活習慣です。

症状の現れ方

 白癬の臨床症状は病型で異なりますが、共通した特徴として、環状の紅斑(こうはん)を示し、中心部は軽快傾向にあるため褐色調で、辺縁は炎症が強く、小水疱(しょうすいほう)丘疹(きゅうしん)が認められます。白癬はかゆいというイメージがありますが、かゆくないこともあり注意が必要です。

検査と診断

 臨床症状だけでは白癬の診断はできません。区別が必要な皮膚病が多数あるので、顕微鏡を使った検査(直接鏡検)で特徴的な菌要素を検出することが診断の決め手になります。

 最も一般的に行われる直接鏡検KOH法はピンセット、ハサミ、メスなどを使って、病変部の鱗屑(りんせつ)(皮膚表面からはがれかけている角質)、小水疱、丘疹、爪、毛などを採取し、スライドグラス上で、水酸化カリウム溶液を滴下して顕微鏡で観察します。白癬菌は少し褐色調で、分岐する傾向のある中隔をもつ菌糸、その菌糸がばらばらになった分節胞子(ほうし)、およびそれが連なった胞子連鎖としてみられます。

 培養検査は、菌種の特定のために行います。日常の診療に使う主な培地は、サブローブドウ糖寒天培地です。また、病変部が汚染されている時は、これに抗菌薬を加えると汚染菌の発育が抑えられて白癬菌が生えやすくなります。白癬の主要原因菌は、トリコフィートン・ルブルム(紅色菌)とトリコフィートン・メンタグロフィーティス(毛瘡菌(もうそうきん))です。

治療の方法

 白癬の治療の基本は、白癬菌に対して抗菌力のある抗真菌薬の外用療法です。角質増殖型足白癬爪白癬ケルスス禿瘡などの病型、あるいは広範囲、難治性、再発性の症例では内服薬も使われます。

 外用療法の長所は、症状の消失や環境への菌の散布の抑制が早いこと、全身的な副作用がないことです。短所は、連日の塗布が必要で、面倒さや不快感、身体的ハンディキャップなどのため適切に行われないことがあること、あるいは行われても塗り残しなどがあることです。

 これに対して、内服療法の長所は、広範囲に薬剤がいきわたり、病変全体に確実に効くこと、最終的な治療効果が高いこと、塗布より簡便なことです。短所は、症状が消えるまでに外用薬より時間がかかることと、全身的な副作用が現れることがあることです。

 外用薬には多数の種類があり、イミダゾール系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、チオカルバミン系、モルフォリン系などに分類されています。最近の薬剤は、共通して白癬菌に対する抗菌力が強くなるとともに、皮膚での貯留性、浸透性もよくなり、有効性が高まっています。また、用法は1日1回が基本で、入浴後か就寝前に塗るのが一般的です。

 外用薬の剤形としては、クリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤があります。最も多く使用されるのはクリーム剤で、使用感もよく、安全性も比較的優れています。軟膏剤は安全性が高く、冬場に使用すると保湿効果もありますが、べとつくなど使用感の点で問題があります。液剤とゲル剤は使用感がよく、薬剤浸透性も優れますが、じくじくした浸軟部(しんなんぶ)やびらんした(ただれた)局面では刺激感を伴うことがあります。外用薬の副作用で多いのは一次刺激と接触アレルギーです。

 白癬に対する内服薬としては、従来からあるグリセオフルビンに代わって、アリルアミン系のテルビナフィン(ラミシール)とトリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が使われています。

 テルビナフィンは125㎎錠を1日1回内服します。副作用は比較的少ないのですが、定期的な血液検査が必要です。イトラコナゾールは、50㎎カプセルを1日1回1ないし2カプセル内服しますが、爪白癬では、パルス療法が用いられます。副作用は比較的少ないのですが、併用してはいけない、あるいは併用に注意を要する薬剤が多くあります。また定期的な血液検査も受けたほうがよいでしょう。

病気に気づいたらどうする

 白癬では、治療を始めると症状が残っていても顕微鏡を使った検査で陰性化してしまうことがあります。そうなると正しい診断がつかないので、治療を行う前に皮膚科専門医を受診して検査を受けてください。

加藤 卓朗

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世界大百科事典内の白癬の言及

【皮膚真菌症】より

…後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。…

※「白癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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