改訂新版 世界大百科事典 「白血球遊走」の意味・わかりやすい解説
白血球遊走 (はっけっきゅうゆうそう)
leucocytoplania
白血球走化性ともいう。白血球が化学的刺激物質(白血球走化性因子)に向かって遊走していく現象で,1888年にレーバーT.Leberによって明らかにされた。走化性因子は炎症反応の場に見いだされるが,細菌,補体,免疫グロブリンなどに由来する。これら因子を作用させると,白血球はそちらに向かって移動を開始するが,移動速度は因子を作用させない場合と同じである。白血球の中でも走化性に差があり,好中球や好酸球は大きく,単球がそれに次ぐが,リンパ球にはこの現象はみられない。たとえばブドウ球菌が存在する場合,好中球は700μm離れていてもそれを認識し移動を開始するが,単球では200μmでしか認識しえない。遊走の能力がおちた状態では,白血球が炎症の場に集まるのが遅れ,炎症過程が長びき治りにくくなったり,感染をくり返しやすい。新生児ではこの能力が低いが,その原因は不明である。
執筆者:市村 恵一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報