改訂新版 世界大百科事典 「皮膚内臓反射」の意味・わかりやすい解説
皮膚内臓反射 (ひふないぞうはんしゃ)
cutaneo-viscera reflex
皮膚にある種の刺激を加えると,その情報は皮膚の求心性神経を通って中枢神経系に伝わり,さらに中枢神経内で内臓を遠心性に支配する自律神経の活動あるいはホルモン分泌細胞の活動を反射性に変化させ,その結果,内臓の機能が変化する。この反応を皮膚内臓反射と呼ぶ。次にこの反射の実例をいくつか列記する。腹部の皮膚を強く刺激すると胃・腸管の運動が抑制されたり,腹部の皮膚の温度を変えると胃・腸管の血流が変化したりする。皮膚刺激によって,心拍数とか血圧のような循環機能が反射性に変化する。会陰部の皮膚刺激で膀胱機能が変わり,排尿調節が可能である。副腎髄質から出るアドレナリンのようなホルモン分泌も皮膚刺激によって調節される。乳児が母親の乳頭を吸引刺激すると,オキシトシン(ホルモンの一種)が脳下垂体から分泌されて,その結果射乳がみられる。皮膚内臓反射はこのほかにも,皮膚のマッサージ刺激,温湿布,冷湿布,はり(鍼)と灸刺激などの内臓機能に及ぼす治療効果にも一部関与していると考えられている。
執筆者:佐藤 昭夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報