六訂版 家庭医学大全科 「皮膚悪性リンパ腫」の解説
皮膚悪性リンパ腫
ひふあくせいリンパしゅ
Cutaneous malignant lymphoma
(皮膚の病気)
どんな病気か
リンパ球はその顔つき(表面マーカー)により大きくTリンパ球とBリンパ球とに分類されます。また、皮膚はリンパ節以外でリンパ腫を生じる代表的な臓器のひとつであり、とくにT細胞リンパ腫が好発します。また、悪性リンパ腫や白血病のなかにはしばしば皮膚病変を生じるものがあり、その
皮膚に原発するT細胞リンパ腫の代表が
原因は何か
①菌状息肉症とセザリー症候群
Tリンパ球が悪性化して皮膚に
また、大型で核が濃く染まる異型リンパ球(息肉症細胞ないしセザリー細胞と呼ぶ)の出現が特徴です。
②成人T細胞白血病・リンパ腫
レトロウイルスのHTLV1(ATLウイルス)が発症に関与している末梢T細胞腫瘍であり、患者さんによっては血液のなかに現れたり(白血病型)あるいは全身のリンパ節がはれたり(リンパ腫型)するなど、さまざまな症状を呈します。
症状の現れ方
①a 菌状息肉症
次の3期に分けられます。また、経過が長く、
紅斑期
体幹、四肢にさまざまな形と大きさの淡紅色から紅褐色のかゆみのない紅斑がたくさんみられ、紅斑の上には粉(
扁平浸潤期
紅斑が次第にしっかりしてきて、硬く扁平(浸潤性)になるとともに周囲に拡大していきます。それにつれて、紅斑の中央はむしろ普通の皮膚のようになり、次第に環のような(環状)あるいは馬のひづめのような形(
腫瘍期
硬く扁平になった紅斑の上に大小さまざまな盛り上がりを生じるようになり、一部崩れて潰瘍になることもあります。
①b セザリー症候群
紅皮症(全身の皮膚が赤く潮紅して、粉(鱗屑)をふく皮膚の状態)、表在リンパ節
②成人T細胞白血病・リンパ腫
すでに白血病やリンパ腫の状態になったあとに
なお、後者の状態は臨床的にも病理組織学的にも菌状息肉症やセザリー症候群などの皮膚T細胞リンパ腫と酷似します。また、この病型は、以前はくすぶり型に含まれていましたが、皮疹を伴わないくすぶり型に比べると予後が悪いため、皮膚型という病型として扱われるようになりました。
検査と診断
臨床像から皮膚悪性リンパ腫が疑われる時は、皮膚生検、血液検査などを行います。また、さらに詳しい検査(組織の免疫染色検査、ATLA(HTLV1)抗体検査、フローサイトメトリーによる細胞の表面マーカー検索、サザンブロット法などによる遺伝子解析、さらには、
治療の方法
①a 菌状息肉症
紅斑期、扁平浸潤期ではステロイド薬の外用や紫外線治療などを行います。また、扁平浸潤期から腫瘍期にかけては放射線治療や多剤併用化学療法などが行われます。
①b セザリー症候群
菌状息肉症の治療に準じます。
②成人T細胞白血病・リンパ腫
放射線治療や多剤併用化学療法などを行います。
病気に気づいたらどうする
早期に診断を確定することが大切ですが、良性疾患とも皮膚悪性リンパ腫の初期とも診断のつきかねる患者さんが多いのも事実です。また、その後の経過をみることが診断にも治療にも大切なことから、医師と信頼関係をもったうえで根気よく治療を続けることが必要です。
立花 隆夫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報