日本大百科全書(ニッポニカ) 「直巻直流機」の意味・わかりやすい解説
直巻直流機
ちょくまきちょくりゅうき
series wound DC machine
巻線界磁の直流機において電機子巻線と界磁巻線を直列に接続したもの。「ちょっけんちょくりゅうき」とも読む。直流電動機によく使われる。電機子巻線と界磁巻線が直列接続されているので電機子電流と界磁電流は同一である。そのため直巻電動機の発生するトルク(回転力)は低速時に大きく高速時に小さい特性となる。このようなトルク特性を直巻特性とよぶ。直巻特性では回転数とトルクが反比例の関係にあるので、回転数とトルクの積である出力は回転数にかかわらずほぼ一定である。これを定出力特性という。定出力特性とは回転数が変化しても所要電力はあまり変わらないということも示している。このような性質は車両駆動に最適である。そのため、1980年代までの日本の電気鉄道の駆動にはほとんどが直巻直流電動機を用いていた。しかし、電気ブラシと整流子が必要であり、その分だけ電動機の寸法が大きくなることおよびブラシの寿命、保守の問題から、電気鉄道では1980年代以降、使用が減っていった。その他の分野でも交流電動機をパワーエレクトロニクスにより駆動することが一般的になったためあまり使われなくなった。現在では電動車椅子(いす)、ゴルフカートなどの小容量の電動車両の駆動に一部使われている。
なお、交流用および交直両用の直巻直流電動機はユニバーサルモーター(交流整流子電動機)とよばれる。
[森本雅之]