改訂新版 世界大百科事典 「相殺関税法」の意味・わかりやすい解説
相殺関税法 (そうさいかんぜいほう)
外国政府の補助付輸出に対して,その政府補助の利益を相殺するために課す特別関税で,通常の関税に付加して課税される。関税定率法8条に,外国政府が輸出品の生産または輸出について直接または間接に補助金を交付し,これによる輸出の結果,日本の競合する国内産業に実質的損害が生ずる場合,相殺関税を課することができると規定されている。これは,本来貿易は国家の関与なく自由に行われるべきものであるが,輸出国政府が輸出補助金を支出するのは不公正であるので,これに対して輸入国が相殺関税を課すという趣旨である。日本のほか,アメリカ,EC(EU)をはじめ,主要国においても類似の制度がある。なお,1994年に妥結したウルグアイ・ラウンド交渉の結果,WTO(世界貿易機関)が発足し,補助金・相殺措置に関する協定が成立し,日本もこれに加盟しているので,前述の相殺関税は,その趣旨に従って適用される。
執筆者:松下 満雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報