日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルグアイ・ラウンド」の意味・わかりやすい解説
ウルグアイ・ラウンド
うるぐあいらうんど
Uruguay round
ガット(GATT、関税および貿易に関する一般協定)の新ラウンド(多角的貿易交渉)のこと。1948年に発足したガットは、加盟国間で自由・無差別な貿易を推進し、世界経済の安定と発展を図るという基本理念にのっとって、70年代までに7回の貿易・関税交渉を行い、関税引下げなどに大きな成果をあげてきた。しかし1980年代に入って、保護主義の高まりや、サービス貿易など商品貿易以外の国際取引の増加などの状況の変化に伴い新たな交渉の必要性が叫ばれるようになった。それに呼応して、86年9月にウルグアイで開催されたガット閣僚会議で交渉開始が宣言されたのが、ウルグアイ・ラウンドとよばれる第8回の貿易交渉である。
第1回から第5回までのガットの貿易・関税交渉の主要な対象は関税の引下げであったが、第6回のケネディ・ラウンドと第7回の東京ラウンドでは、それに加えて農産物の問題や非関税障壁の低減も交渉対象とされ、多数の開発途上国も参加して規模が拡大した。ウルグアイ・ラウンドでは参加国は100か国を超え、交渉対象もさらに拡張されて、関税や非関税障壁の引下げや撤廃による市場開放だけでなく、サービス貿易の規制緩和やガットのルール確立・強化も交渉課題となった。
[志田 明]
農業分野の交渉が難航
交渉は15の分野に分かれて開始されたが、それらは大別して三つのグループに集約される。第一は、今回新たに採り上げられた分野で、技術やデザインなど知的財産権の保護に関するルールの策定を扱う分野、直接投資の増大に伴って生じているローカル・コンテント要求などの制限措置の廃止を扱う分野、金融、通信などのサービス貿易の市場参入規制軽減を扱う分野である。第二は、保護が続いている農産物や繊維製品の市場開放について交渉する分野。第三は、緊急避難的な輸入制限(セーフガード)措置やアンチ・ダンピング措置について、その乱用を防ぐためのルール策定を扱う分野である。
当初1990年末までに終結する予定であった交渉は、多くの分野で遅延を余儀なくされた。91年4月に交渉グループは七つに再編成され、12月に事務局長が最終合意案(ドンケル・ペーパー)を提示した。焦点である農業分野における最終合意案のポイントは、すべての農産品輸入について関税化に移行(例外なき関税化)、最低輸入量(ミニマムアクセス)の設定などである。
[志田 明]
新ラウンド決着
1993年12月、ウルグアイ・ラウンドは曲折を経ながらも、ついに合意に達した。最終包括協定案(サザランド・ペーパー)は94年4月に調印され、95年に発効した。新ラウンドの発効とともに、暫定的な機関であったガットは紛争処理機関を強化した正規の国際機関として、世界貿易機関(WTO)に衣替えした。
[志田 明]