世界貿易機関(読み)せかいぼうえききかん(英語表記)World Trade Organization; WTO

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

世界貿易機関
せかいぼうえききかん
World Trade Organization; WTO

自由貿易体制をより強固なものとするために,ガット(関税と貿易に関する一般協定)を発展的に解消して設立された,貿易に関する国際機関。1995年1月に正式発足。第2次世界大戦直後,貿易に関する国際機関として国際貿易機関 ITO創設の試みがなされたが,アメリカ合衆国の反対により実現せず,その構想の一部であるガットだけが発足したという経緯がある。WTOは ITO構想の再版ともいえる。1980年代末,ガットより強力な国際機関が求められるようになり,ウルグアイ・ラウンドの妥結を待って 1994年4月にモロッコのマラケシュで開かれたガット閣僚会議で設立が決まった。貿易ルールの策定と実施,交渉の場の設置と貿易の自由化の監視,紛争処理,制度の決定過程の透明性の拡大,主要国際経済機関との協力,貿易における発展途上国の支援を,おもな目的とする。またガットが物品の貿易に特化していたのに対し,WTOはサービスや知的財産権知的所有権)までを扱う。本部はスイスのジュネーブに置かれ,発足時の加盟国・地域は 81。2013年現在 159。

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知恵蔵の解説

世界貿易機関

WTO」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディアの解説

世界貿易機関【せかいぼうえききかん】

World Trade Organization(略称WTO)の訳。ウルグアイ・ラウンドの決着を受けて,国際協定であったGATTを発展的に吸収して設立された国連の関連機関の一つ。1995年設立。本部ジュネーブ。世界貿易の自由化,およびサービス貿易や知的所有権等の貿易ルールの確立を進める。最高機関は2年に1回開かれる参加国の閣僚会議で,この会議がない期間は一般理事会が任務を行う。一般理事会の下に物品やサービス等の貿易に関する理事会や種々の委員会がある。また加盟国間の貿易紛争に対し,当事国間の協議によらず,また全会一致でなくても紛争処理機関(パネル)の設置(パネル報告に対し再審要請ができる2審制)や対抗措置の発動が可能になるなど,紛争解決手続きが自動化・迅速化され,ルールに基づく司法手続きへと整備されてきた。2013年3月現在の加盟国・地域は159。中国は2001年12月加盟。しかし,アメリカ・EU・日本の主要国間の利害対立や主要国主導の政策・組織運営のあり方に対する途上国の反撥など問題も多く,1999年12月,アメリカ・シアトルで開かれた閣僚会議は新ラウンドの枠組全体をめぐって紛糾,会議は凍結され,さらに2003年9月,メキシコ・カンクンでの閣僚会議も決裂したが,2004年7月ジュネーブでの一般理事会で新ラウンドの枠組み合意に達し,交渉期限の最低1年延長などを決めた。
→関連項目アジア・ヨーロッパ会議アメリカ通商代表部アルメニア(国)インターネット自由貿易圏ウルグアイ・ラウンド農業合意FTAカンボジア工業所有権保護同盟条約サービス貿易情報技術協定食料・農業・農村基本問題調査会世界食糧サミットセーフガード相互主義多国間主義WTO基本電気通信交渉中華人民共和国デカップリングTRIPS協定二国間主義日米構造協議日米自動車協議日米半導体協定貿易関連投資協定ポーランド木材貿易

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世界大百科事典 第2版の解説

せかいぼうえききかん【世界貿易機関 World Trade Organization】

ウルグアイ・ラウンド合意をうけて,〈世界貿易機関を設立するマラケシュ協定〉(WTO協定。1994)にもとづき,GATT(ガット)に代わる機関として1995年1月1日設立された国連の関連機関。加盟国・地域128(1996年末),本部ジュネーブ。WTOは,関税その他の貿易障壁の除去や輸出入制限の軽減を図り,加盟国間の自由で円滑な通商関係実現を目指す。GATTでは扱わなかったサービス貿易,知的所有権などに関するルールも監視の対象とし,GATTより強化された機能で紛争処理に当たる。

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大辞林 第三版の解説

せかいぼうえききかん【世界貿易機関】

1995年1月にガットに代わって発足した国際機関。ウルグアイ-ラウンドに最終合意した一二〇か国以上が参加し、サービスや知的財産権をも含めた世界の貿易を統括する。常設の理事会・総務会の設置や紛争処理制度の整備など、ガットより機能が強化された。 WTO 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

世界貿易機関
せかいぼうえききかん
World Trade Organization

略称WTO。ガット(GATT=関税と貿易に関する一般協定)による多角的通商交渉「ウルグアイ・ラウンド」(1986~93年)の最終合意文書「マラケシュ協定」によって設立が決定され、ガットを発展的に解消する形で1995年1月1日に発足した国際機関。本部をジュネーブに置く国際連合の正式専門機関で、2009年現在153の国と地域が加盟している。多角的で無差別な自由貿易を推進し、各国の経済発展に資するというガットの精神を受け継ぎ、「ドーハ・ラウンド」(2001年~ )の主体として活動中である。ガットが「協定agreement」であったのに対し、WTOは「機関organization」であり、加盟国の合意事項違反に経済的制裁を課するなど、国際紛争処理能力が強化されている。
 多角的通商交渉は当初の貿易障壁の軽減や撤廃という目的から、その領域をしだいに拡大し、今日では金融・通信・運輸などのサービス自由化から、特許・商標・著作物等の知的所有権や通関手続の国際的統一、投資ルールの設定までもが交渉の対象とされるようになった。さらには各国の労働条件や環境問題が論じられるに至っている。経済発展段階が違い、利害関係を異にする加盟国が急増したことと相まって、コンセンサス(全会一致)方式をとる交渉はけっして容易なものではない。自由貿易やグローバリゼーションに反対する勢力も存在し、1994年のシアトル閣僚会議は、安価な輸入品流入に危機感をもつ労働組合や、自由貿易が環境破壊につながることを懸念するNGO団体などのデモによって開催を阻止された。ようやく開催にこぎつけた「ドーハ・ラウンド」も中断や決裂を繰り返し、2009年末時点で大枠合意にすら至っていない。交渉を難航させているのは、農産品輸出国のアメリカに対する国内農業補助金削減要求、同じく農産品輸出に関心をもつ国々からの先進国市場開放への圧力、開発途上国による鉱工業品関税引下げ要求への抵抗といった、根強い対立の構図である。
 さらに2008年の「リーマン・ショック」を契機とする世界大不況に際会して数度にわたって開催された主要20か国・地域(G20)の首脳会談においても、自由貿易体制堅持の重要性が主張されたにもかかわらず、多くの国が関税の引上げ、非関税障壁の強化、国内産業の支援等の形で保護貿易への傾斜を強めていることは、WTOにとっての重大なる危機である。[村上 敦]
『岩沢雄司著『WTO(世界貿易機関)の紛争処理』(1995・三省堂) ▽農林水産物貿易問題研究会編『資料 世界貿易機関(WTO)農業関係協定集』(1995・国際食糧農業協会) ▽外務省経済局監修『WTO――世界貿易機関を設立するマラケシュ協定』(1995・日本国際問題研究所) ▽鷲見一夫著『世界貿易機関(WTO)を斬る――誰のための「自由貿易か」』(1996・明窓出版) ▽津久井茂光著『WTOとガット――コメンタール・ガット1994』(1997・日本関税協会) ▽小寺彰著『WTO体制の法構造』(2000・東京大学出版会) ▽本山美彦編『グローバリズムの衝撃』(2001・東洋経済新報社)』

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