真番(読み)しんばん(英語表記)Zhēn fān
Chinbǒn

改訂新版 世界大百科事典 「真番」の意味・わかりやすい解説

真番 (しんばん)
Zhēn fān
Chinbǒn

前108年,漢の武帝が衛氏朝鮮国を滅ぼしたのち設立した漢四郡の一つ。真番郡は設立後27年ではやくも廃止されたので,その所在地の比定をめぐって諸説がある。そのおもなものは白鳥庫吉などに代表される楽浪以北にあったとする以北説と,稲葉岩吉今西竜末松保和,李丙燾などに代表される楽浪以南説とに分かれるが,諸説はまたそれぞれに細かい点で一致せず異論がある。現在はほぼ以南説におちついている。この問題についての重要な基本的文献は,《漢書》分注引用の〈茂陵書〉所見の真番郡の里程に関する記事で,これをいかに解するかが決め手になる。また,《漢書》の朝鮮伝には衛満の時代,その付近に真番,臨屯の諸小国が存在した,という注目すべき記事がある。また,衛氏朝鮮の末期,真番辰国が衛氏のために漢への朝貢を妨害されたことが武帝の衛氏討伐の契機となったと記されている。これらの文献を根拠として真番郡以前に,在地の韓族勢力として真番国(真番族)が存在したという説が有力である。
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