日本大百科全書(ニッポニカ) 「睾丸回転症」の意味・わかりやすい解説
睾丸回転症
こうがんかいてんしょう
陰嚢(いんのう)内で精索(精管、血管、神経を包む索状物)を軸にして睾丸、副睾丸が回転するもので、睾丸捻転(ねんてん)、精索捻転ともいう。精索がねじれて睾丸の動静脈が締め付けられるため、睾丸および副睾丸の血流が途絶してしまい、放置すれば壊死(えし)に陥る。睾丸を鼠径部(そけいぶ)に強くつないでいる精索の付着異常や精索中に含まれる睾丸鞘膜(しょうまく)が大きすぎることなどが原因と考えられている。思春期前に多くみられ、半数は夜間睡眠中に突然発病する。まず精索中の睾丸挙筋がけいれんをおこし、睾丸が挙上したときに精索全体が捻転してしまう。左側は時計と反対方向に、右側は時計方向に回転する。発病は急激で、下腹部から鼠径部へかけて強い痛みがおこり、嘔吐(おうと)や発熱もみられる。回転した睾丸は陰嚢の上方にあって、腫(は)れて痛む。発病してから3~4時間以内に手で回転を戻して整復するが、何回転も捻転したり血行障害が強い場合は、手術が必要となる。24~48時間も経過すると、睾丸は壊死に陥るので除睾術が行われる。
[松下一男]