矢田地蔵縁起(読み)やたじぞうえんぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢田地蔵縁起」の意味・わかりやすい解説

矢田地蔵縁起
やたじぞうえんぎ

大和(やまと)(奈良県)金剛山矢田寺本尊地蔵菩薩(ぼさつ)像の創立記とその霊験(れいげん)の物語を説いた縁起。同寺の中興満米上人(まんべいしょうにん)が閻魔(えんま)王と地獄を巡って生身地蔵に会い、この世に帰ってからその姿を写し本尊として寺を開くという開創譚(たん)と、康成(やすなり)という武士が継父を恨み、誤って実母を殺すが、矢田寺の地蔵菩薩に懺悔(ざんげ)したので、死後地獄に落ちたが地蔵に救い出されるという話が描かれる。遺品では京都・矢田寺の二巻本(鎌倉時代、14世紀、重文)などの絵巻のほか、奈良・矢田寺の二幅本などが知られている。

[村重 寧]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の矢田地蔵縁起の言及

【地蔵縁起絵巻】より

…そして特定の寺院の地蔵尊の由来を説く縁起や,中国,日本のさまざまな地蔵の霊験談を集めた《地蔵菩薩霊験記》が作られ,絵巻化された。前者の代表例としては鎌倉時代の《矢田地蔵縁起》2巻(京都矢田寺)があげられよう。満米聖人が地獄で生身の地蔵に会い,その姿を彫って矢田寺を開いた由縁と,あやまって母を殺した武者所康成がその死後,日ごろ信仰していた矢田寺の地蔵によって地獄から救い出される霊験譚を内容としている。…

※「矢田地蔵縁起」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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