化学辞典 第2版 の解説
矩(く)形波ポーラログラフィー
クケイハポーラログラフィー
square-wave polarography
広義の交流ポーラログラフィーの一種.重畳する交番電圧として微小振幅の,矩形波を用いる.一般に,指示電極に電圧を加えた場合,電解セルを通して流れる全電流は,被電解物質の電解酸化還元による電解電流(ファラデー電流という)と,電極-溶液界面に生成される電気二重層の充放電に費やされる容量電流(ノンファラデー電流ともいう)の和である.前者は被電解物質の濃度に比例するが,後者はその濃度にほとんど無関係である.したがって,ポーラログラフィーの諸方法を用いる場合,その分析感度は容量電流の除去が可能かどうかということにかかっている.矩形波ポーラログラフィーでは,電解電流と容量電流の挙動の違いをうまく利用して全電流から容量電流を除き,ファラデー電流のみを検出して,これを増幅する方法が用いられている.すなわち,矩形波電圧の半周期についてみれば,電解電流は一般に t-1/2 より弱く時間とともに減少するが,一方,容量電流は
exp(-t/RC) (R:溶液抵抗,C:電気二重層の容量)
に比例して減少し,時定数RCが小さい場合には,その減衰はきわめて速くなる.したがって,半周期の終わりのほうのみをみれば,全電流には容量電流が含まれないことになる.同じ原理にもとづく方法として,パルスポーラログラフィーもある.両者とも痕跡分析法として広く実用化されている.分析感度は,可逆波の場合には 10-8 mol L-1,非可逆波に対しては2×10-7 mol L-1 といわれている.[別用語参照]ポーラログラフ波
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報