石貫穴観音横穴(読み)いしぬきあながんのんよこあな

国指定史跡ガイド 「石貫穴観音横穴」の解説

いしぬきあながんのんよこあな【石貫穴観音横穴】


熊本県玉名市石貫にある横穴。玉名市中心部から北へ約5km、繁根木(はねぎ)川に架かる虎取橋を渡った先に石貫ナギノ横穴群があり、さらに約400mほど進むと、この石貫穴観音横穴がある。3基の大きな横穴は入り口が3重の飾り縁となっており、外側の2重はアーチ形で、赤色の円文がかすかに見える。中央の横穴は奥室に千手観音が彫ってあり、右に十一面観音像があるため「穴観音」と呼ばれている。この横穴は前室と奥室からなり、前室はほぼ正方形で高さ2.5m、幅2.9mで、上に庇が造られている。奥室の入り口には本瓦葺きの庇を設け、奥壁に千手観音像が彫られているのは日本でも類例がないとされ、1921年(大正10)に国の史跡に指定された。千手観音信仰は奈良時代に伝来したもので、8世紀前半に造られた横穴と考えられている。JR鹿児島本線玉名駅から産交バス「虎取」下車、徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石貫穴観音横穴」の意味・わかりやすい解説

石貫穴観音横穴
いしぬきあなかんのんよこあな

熊本県玉名市石貫にある横穴群。1916年(大正5)本格的調査が行われた。石貫川右岸に発達した丘陵南西に面する崖(がけ)に、凝灰岩を穿(うが)ってつくられた3個の横穴よりなる。とくに著名な中央の横穴は、玄室にあたる部分が主室と奥室とからなり、主室には左右に各1個の棺床、奥室には奥壁に沿って1個の棺床がつくりだされている。奥壁に千手観音(せんじゅかんのん)が浮彫りされ、その前に石造十一面観音像が安置されているため古くから穴観音と称され、信仰の対象ともなった。ただ浮彫りが横穴築成当初のものかどうかは確定できない。

 近くに石貫ナギノ横穴群があり、45基の横穴が並ぶ。それぞれ、1921年国史跡に指定された。

[久保哲三]

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