翻訳|tuff
細かな火山岩の破片からなる地層が固結してできた岩石をいう。最近はフィッシャーR.V.Fisherの定義(1966)が使われるようになり,構成粒子の2/3以上が直径2mm以下の火山砕屑物(さいせつぶつ)である岩石を凝灰岩という。より粗粒になって直径2mm以下の火山灰が2/3以下,直径2~64mmの火山礫(れき)が2/3以下,直径64mm以上の火山岩塊が1/3以下の火山砕屑岩は火山レキ凝灰岩という。ウェントワースC.K.WentworthとウィリアムズH.Williamsの古い定義(1932)では,直径4mm以下の粒子が多量を占める火山砕屑岩を凝灰岩としていた。日本列島は中新世のころに火山活動がさかんであった。この活動の多くは海底でおこり火山砕屑岩が多量にできた。この後高い地温こう配の地中に埋もれて緑色の変質鉱物を生じた。そのためにこれらを一括してグリーンタフ(緑色凝灰岩)と呼んでいるが,凝灰岩以外の火山砕屑岩や溶岩,その上に積もった堆積岩も含まれている。
執筆者:宇井 忠英
凝灰岩は加工が容易なため,古墳時代から各種の石棺や石槨,横穴式石室の石障などにひろく利用された。また露頭では横穴がうがたれることも多い。仏教寺院では力のかかる礎石には花コウ岩その他の硬い石を用いたが,あまり荷重のかからない建物基壇上面の敷石,基壇化粧,階段などに全面的に用いた。しかし7,8世紀には一部,礎石にもこれを用いることもあった。このほか,石層塔,五輪塔その他の石塔類,灯籠なども製作するほか,畿内の一部,九州,関東,東北地方で磨崖仏をつくっている。畿内では鎌倉時代まで,九州や関東ではその後も盛んに塔婆類に用いている。畿内では奈良県・大阪府の境の二上山とその周辺に石切場が見つかっており,採石場に層塔を彫り残した鹿谷寺(ろくたんじ),岩屋寺など7,8世紀の遺跡も知られる。そのほか,二上山北東麓の香芝(かしば)の穴虫石切場遺跡も大規模な採石場の一つである。
執筆者:坪井 清足
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
火山学では、構成粒子の大部分が直径4ミリメートル以下の火山灰よりなる火山砕屑(さいせつ)岩を凝灰岩とよび、直径2ミリメートル以上32ミリメートル以下の火山礫(れき)よりなるものを火山礫凝灰岩、構成粒子が2ミリメートル以上の軽石であれば軽石凝灰岩、2ミリメートル以上の岩滓(がんさい)であれば岩滓凝灰岩として用いているが、これらを総称して凝灰岩として用いることもある。非火山性地域の堆積(たいせき)岩中の凝灰岩は、遠方から運ばれるため細粒であることが多い。凝灰岩が主として火山ガラスの細片よりなるときはガラス質凝灰岩、主として結晶よりなるときは結晶凝灰岩、すでに存在していた火山体の岩片よりなるときは石質凝灰岩とよぶ。色は淡緑色、緑色、白色、淡紅色、赤色、褐色、黒色とさまざまで、形状も緻密(ちみつ)なものから、すきまが多いものまでいろいろある。凝灰岩は火山灰に由来するので、水平方向の連続性のよいものが多く、とくに白色の酸性凝灰岩は地質構造調査の鍵層(かぎそう)として、地層の対比に利用されることが多い。
[矢島敏彦]
火山噴火の際、火砕流のような形で高温の火山灰、軽石、岩滓などが大量に厚く堆積すると、高熱と自重による圧力のため溶結作用がおこって緻密、扁平な岩塊をつくる。岩質としては石英安山岩質ないし流紋岩質であることが多い。このようにしてできた溶結凝灰岩はかなり大規模に分布し、垂直に近い崖(がけ)や柱状節理の発達のためみごとな景観を示す。日本では十和田湖(青森・秋田県)周辺、大雪山の層雲峡(北海道)、阿蘇(あそ)(熊本県)などに分布する。
[矢島敏彦]
日本の新第三系の地層の中には淡緑色の凝灰岩が特徴的に発達していて、グリーンタフとよばれている。これは、海底火山活動で堆積してできた凝灰岩類が熱水変質によって緑色を帯びたものである。北海道南西部から本州の日本海側、フォッサマグナ地域にかけて分布しており、この地域をグリーンタフ地域とよぶことがある。黒鉱鉱床を伴うことがあるのが特徴の一つである。
[矢島敏彦]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…栃木県宇都宮市大谷町付近に産する流紋岩質凝灰岩の石材名。新生代第三紀の火山活動で噴出した火山灰が,海水中に堆積して形成されたもので,緑色から淡緑色,あるいは淡褐色を呈する文字どおりのグリーンタフである。…
…ある特性はよくても他の特性がきわめて悪いということは珍しくない。たとえば,軟質で吸水性の高い比重1.4前後の凝灰岩は,凍害や風害を受けやすいが,耐火性では1200℃の高熱に耐えられるのに,緻密で硬度の高い比重2.7前後の花コウ岩は600℃の熱で崩壊する。大理石は普通,花コウ岩より弱いと考えられているが,耐火性は強く,石灰化するには800℃の熱を要する。…
※「凝灰岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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