改訂新版 世界大百科事典 「砂耕」の意味・わかりやすい解説
砂耕 (さこう)
sand culture
土壌の代りに砂に根を張らせ,生育に必要な無機養分を水に溶かした形で与えて植物を栽培する方法で,砂栽培ともいい,水耕の一方式である。砂漠や海岸の砂丘地などでは,砂耕によって野菜などの栽培が行われることがある。とくにアラブ首長国連邦のアブ・ダビーでは,海岸にポリエチレンハウスを建て,脱塩した海水を用いて種々の野菜を砂耕していることで有名である。砂耕の施設は排水のよい砂のベッドと自動灌水装置だけで,他の水耕方式に比べて,施設費は安くてすむ。ベッドに作物を植え,1日数回,無機養分を含む水溶液(培養液)をかけ流すが,砂は保水力が強く,培養液の排出に時間がかかるので,礫耕(れきこう)などに比べて少量の液を流すようにしないと,根は酸素不足を起こしてしまう。ベッドの底から10%程度が排出されるように培養液を与えるとよい。ベッドから排出された培養液は普通,再利用しないで捨てる。砂耕では1作ごとに,クロルピクリンや臭化メチルなどの薬剤か,蒸気でベッドを消毒しなければならないが,これは,他の水耕方式での消毒に比べるとかなりめんどうである。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報