研究倫理教育責任者(読み)けんきゅうりんりきょういくせきにんしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「研究倫理教育責任者」の意味・わかりやすい解説

研究倫理教育責任者
けんきゅうりんりきょういくせきにんしゃ

研究者に対する倫理教育や研究倫理問題の責任者。英語名Research Integrity Officerの頭文字をとってRIOと略称する。研究活動において捏造(ねつぞう)、改竄(かいざん)、盗用などの不正行為が行われにくい研究環境をつくるため、国が大学を含む各研究機関の部局ごとに設置を義務づけている。研究倫理教育責任者は、文部科学省が日本学術会議や日本学術振興会などと作成した倫理教育プログラムにのっとり、研究機関に所属する研究者を対象に研究倫理教育を少なくとも5年ごとに定期的に実施し、公正な研究活動が継続して行われるよう検討を重ねたり、制度づくりを行ったりする。

 研究機関による公的研究費の不正使用が相次いだため、文部科学省では、こうした不正を防止すべく旧ガイドラインの改定作業を進めていたが、2014年(平成26)にSTAP細胞問題が起き、不正防止のための仕組みづくりが急務となった。そこで同年8月に改定した「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」において、各研究機関にRIOを中心とした不正行為防止体制の確立や、管理責任の明確化を求め、定期的な研究倫理教育に取り組むことを義務づけた。同ガイドラインは2015年4月に適用された。また、STAP細胞問題に関連して、研究論文中核となる実験を行う前から、望ましい結果をあらかじめ作成しておく「仮置き」とよばれる作業慣行が蔓延(まんえん)している研究現場の実態が明らかになった。そのため、新ガイドラインではこのような捏造問題への対応が強化された。

 文部科学省では、標準的な研究倫理教育を電子教材として取りまとめ、研究者向けとしてだけではなく、研究者を目ざす学生の教材としても活用し、規範意識を徹底するとしている。

[編集部 2016年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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