改訂新版 世界大百科事典 「硃批諭旨」の意味・わかりやすい解説
硃批諭旨 (しゅひゆし)
zhū pī yù zhǐ
中国,清朝の雍正帝が,地方官から送られてくる奏摺に硃批(朱筆による諭旨)を書き加え,これを編纂したもの。《雍正硃批諭旨》ともいう。地方官から公式ルートを通じて送られてくる上奏文を題本というが,奏摺は,題本とは異なって,皇帝に私的に送られる,いわば親展の上奏文である。雍正帝は,地方政治の実状を掌握し,かつ地方官に対する管理体制を強化するために,この奏摺を重んじ,奏摺政治ともいわれる独特な政治を行った。地方政治に関する詳細な報告と雍正帝の面目躍如たる硃批は,雍正時代史のみならず,清朝の中国支配を考えるうえでこのうえない資料を提供するものである。《硃批諭旨》は雍正帝が雍正10年(1732)編集刊行し始め乾隆3年(1738)に完成したが,このもとになった硃批の入った奏摺が《宮中檔雍正朝奏摺》として近年台湾(故宮博物院)で影印出版された。
執筆者:小野 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報