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中国の代表的美術館。今日、同名のものが北京(ペキン)と台北(たいほく/タイペイ)にあるが、もとは一つで、1925年10月10日、北京の故宮、紫禁城(しきんじょう)の後半部に設けられたのに始まる。清(しん)の皇帝や皇后の住居であったところで故宮の名はこれによる。絵画、書籍、陶磁器、玉器(ぎょくき)、金銀器、漆器、染織、服飾、文房具、家具、祭器など数十万点があった。故宮所蔵の文物はいわば中国民族の精神の結晶ともいうべきもので、明(みん)・清代に集められた。青銅器や玉器などのように古いものは殷(いん)・周(しゅう)の昔にまでさかのぼる。また瀋陽(しんよう)の故宮、熱河の行宮(こうきゅう)に所蔵されていた宝物は、紫禁城前半部にある文華殿、武英殿に移され、これに中央の太和殿、中和殿、保和殿の三大殿を加えて、古物陳列所として一般に公開した。
1931年満州事変が起こり、戦火が北京に波及することを察した国民政府は、これらの重要美術品や書籍を約2万個に分けて梱包(こんぽう)し、まず上海(シャンハイ)に発送、ついで南京(ナンキン)に移したが、37年に戦争が南に広がったため、これをさらに四川(しせん/スーチョワン)省、貴州(きしゅう/コイチョウ)省など中国の奥地に疎開した。45年8月、戦争の終結によって、これらの文物はふたたび南京に戻されたが、やがて国共内戦の激化につれて、49年に数万点の宝物が台湾に運ばれ、65年11月、台北市に故宮博物院が成立し、所蔵品の一部を展示することとなった。所蔵品中の圧巻は多数の名画であって、范寛(はんかん)の『谿山(けいざん)行旅図』、趙孟頫(ちょうもうふ)の『鵲華(じゃくか)秋色図巻』、黄公望(こうこうぼう)の『富春山居図巻』、沈周(ちんしゅう)の『夜坐図』などがある。
一方、北京の故宮博物院も1949年、人民政府の樹立以来、遺留された宝物のほかに新収のものを加えて規模も拡大している。明清工芸館、珍宝館、絵画館、陶瓷(とうじ)館、青銅器館に分かれており、また宮殿や門楼の一部を公開して特別展などが行われている。北京の収蔵品では、展子虔(てんしけん)の『遊春図』、張擇端(ちょうたくたん)の『清明上河図巻(せいめいじょうかずかん)』などが著名である。
[吉村 怜]
『樋口隆康編『世界の博物館21 故宮博物院』(1978・講談社)』
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北京にある博物館。1911年の辛亥革命によって清朝が倒れたのち,故宮の内廷は宣統廃帝溥儀(ふぎ)の居所となり,外朝には14年に古物陳列所が置かれた。24年馮玉祥(ふうぎよくしよう)が北京に入城し,身の危険を感じた溥儀が脱出したので,民国政府は清室善後委員会を組織して内廷を管理し,25年10月11日故宮博物院として一般に公開した。古物陳列所は,第2次大戦後に故宮博物院に併合された。この間多数の文物が流出し,有名な〈故宮宝盗事件〉も起こっているが真相はわからない。最近香港から買いもどされた《中秋帖》《伯遠帖》《五牛図》等の新収品を含めて,現在は91万余点の文物が収蔵されている。なお日本の侵略に備えて一部の文物は南京,武漢,上海等に移されてのち,49年4月以後は台湾にあって,〈故宮博物院〉の名称のまま保管されている。
執筆者:勝村 哲也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
明清両朝の皇宮である紫禁城をそのまま保存した大規模な博物館。中国歴代の秘宝が清朝皇帝に継承され,その多さは溥儀(ふぎ)に自分がどれだけ宝を持っているかわからないといわせるほどであった。1925年,博物館として公開されるが,日中戦争が始まると70万点に及ぶ文物は疎開先を転々としたのち,48年台北に移管,65年台湾故宮博物院に展示されるに至った。他方,中華人民共和国成立後,北京の方でも博物院を再建し,その建築群は世界文化遺産に指定された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報
…清朝の乾隆帝(1736‐95)は多くの絵画,書蹟,陶磁器,染織品,工芸品を収集している。近代的博物館が生まれるのは辛亥革命(1911)によって清朝が倒れてからで,1914年,北京に古物陳列所が設けられ,25年には故宮博物院が公開された。国共両軍による内戦の最中,国民政府は48年多くの宝物を台湾に運び出した。…
※「故宮博物院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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