改訂新版 世界大百科事典 「硫化鉄鉱物」の意味・わかりやすい解説
硫化鉄鉱物 (りゅうかてつこうぶつ)
iron sulfide mineral
天然に産する鉄の硫化物をいう。おもな硫化鉄鉱物として黄鉄鉱FeS2,白鉄鉱FeS2,トロイライトtroilite FeS(単硫鉄鉱),磁硫鉄鉱Fe1-xS(六方および単斜磁硫鉄鉱)があるが,ほかに次のようなものが知られている。グライガイトgreigite Fe3S4は等軸晶系でモース硬度4.5~5.5,灰白色金属光沢を示し,比重4.5~4.8,へき開は{100}と{111}に発達し,強い磁性を有する。堆積岩中にきわめてまれに産し,低温のもと泥中で形成されたと考えられる。1964年に発見された。スマイサイトsmythite(Fe,Ni)9S11は六方晶系でモース硬度4,黄褐色金属光沢を示し,比重4.38。へき開は{0001}に発達,磁性を有し,磁硫鉄鉱にきわめて類似した性質を示す。低温(75℃以下)で安定な鉱物で,210℃以上ではゆっくりと分解して磁硫鉄鉱と黄鉄鉱を生ずる。磁硫鉄鉱を交代して形成されたような産状を示し,世界各地でみいだされているが,日本では釜石鉱山産のものが報告されている。マッキナワイトmackinawite (Fe,Ni)9S8は正方晶系でモース硬度は磁硫鉄鉱よりやや低い程度,色は灰白色,金属光沢。へき開は{001}に完全で,弱い磁性を有する。マッキナワイトは1964年に発見されたが,その後少量ではあるが高温型の銅鉱床に普遍的に産することがわかってきた。その産状から黄銅鉱からの離溶産物と考えられている。
執筆者:鞠子 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報