黄銅鉱(読み)オウドウコウ(英語表記)chalcopyrite

翻訳|chalcopyrite

デジタル大辞泉 「黄銅鉱」の意味・読み・例文・類語

おうどう‐こう〔ワウドウクワウ〕【黄銅鉱】

硫黄からなる鉱物。黄鉄鉱に似るが、条痕じょうこん色は緑黒色で軟らかい。正方晶系。銅の鉱石として重要。カルコパイライトキャルコパイライトチャルコパイライト

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精選版 日本国語大辞典 「黄銅鉱」の意味・読み・例文・類語

おうどう‐こうワウドウクヮウ【黄銅鉱】

  1. 〘 名詞 〙 銅と鉄の硫化鉱物化学式 CuFeS2 金属光沢があり真鍮色で、条痕は緑黒色。銅の主要な鉱石。〔鉱物字彙(1890)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄銅鉱」の意味・わかりやすい解説

黄銅鉱
おうどうこう
chalcopyrite

低~高温の熱水鉱脈鉱床、接触交代鉱床スカルン型鉱床)、黒鉱鉱床を含む噴気性堆積(たいせき)鉱床、含銅硫化鉄鉱床中、ある種の気成鉱床などに産する硫化鉱物。もっとも一般的な銅の鉱石鉱物。硫化鉱物中もっとも多種の共存鉱物をもつものの一つといわれる。

 地表条件で徐々に分解され、より品位の高い硫化銅鉱物や斑(はん)銅鉱などに変化するほか、第二銅イオン(Cu2+)を主成分とするくじゃく石・藍(らん)銅鉱・ブロシャン銅鉱・珪(けい)くじゃく石などが形成される。自形結晶は変化に富むがまれである。正八面体に近い立体、俗に三角銅とよばれている直角二等辺三角形台厚板状のものや、一見斜方柱状のものもある。外見上は黄鉄鉱に類似するが、硬度が低く、条痕(じょうこん)はやや緑色味を帯びる。地表で水分を含んだ空気にさらされると虹(にじ)色の錆(さび)を生ずることが多い。化学成分変化も化学組成変化も乏しい。理想値よりやや硫黄(いおう)に乏しいものがあり、高温高圧条件下で生成されたものでは、少量のニッケルを含むものがある以外は含セレン変種があるのみ。室内実験でつくられた高温型黄銅鉱に近く、わずかに硫黄に乏しい相として、タルナフ鉱、モオイフーク鉱、ヘイコック鉱、プトラン鉱などの類似種がCu-Fe-S三成分系鉱物に知られている。

 日本の産地は多数あるが、秋田県仙北郡協和町(現、大仙(だいせん)市協和)荒川鉱山閉山)の変化に富む結晶や、栃木県上都賀(かみつが)郡足尾町(現、日光市足尾町)足尾鉱山(閉山)、秋田県北秋田郡阿仁(あに)町(現、北秋田市阿仁)阿仁鉱山(閉山)の良晶はよく研究された。英名はギリシア語のchalkos(銅)とpyr(閃光)の合成による。

加藤 昭 2016年1月19日]



黄銅鉱(データノート)
おうどうこうでーたのーと

黄銅鉱
 英名    chalcopyrite
 化学式   CuFeS2
 少量成分  Ni,Se
 結晶系   正方
 硬度    3.5~4
 比重    4.28
 色     真鍮
 光沢    金属
 条痕    緑黒
 劈開    無
       (「劈開」の項目を参照)

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改訂新版 世界大百科事典 「黄銅鉱」の意味・わかりやすい解説

黄銅鉱 (おうどうこう)
chalcopyrite

日本でもっとも多く見られる銅鉱物。化学組成CuFeS2(Cu34.6%)。産地による組成変化は小さい。黄鉄鉱より濃い黄色で,割った面は貝殻状である。結晶として産するときは四面体が多いが,自形を示さないことも多い。セン亜鉛鉱(ZnS,等軸晶系)と似た結晶構造(セン亜鉛鉱を二つ重ねて,その中のZn原子の半分をCu,半分をFeで置き換えた構造)で,正方晶系に属するが,その四面体(面のなす角108°40′)は立方晶系の四面体(面のなす角104°30′)に近い。比重4.1~4.3,モース硬度3.5~4。条痕色は緑黒。銅は鉱脈(足尾,尾去沢),黒鉱(花岡,釈迦内),キースラーガー(別子,日立),接触交代鉱床(釜石)など各種のタイプの鉱床に産するが,その大部分は黄銅鉱としての産出である。
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化学辞典 第2版 「黄銅鉱」の解説

黄銅鉱
オウドウコウ
chalcopyrite

CuFeS2.銅と鉄の硫化鉱物で,広く分布し,銅の原料鉱石として重要である.正方晶系,空間群 2m,格子定数 a0 = 0.525,c0 = 1.032 nm,単位格子中の化学式数は4.c/aは1.97で,c軸を半分にすると擬立方となり,せん亜鉛鉱型の結晶構造となる.硬度3.5~4.密度4.1~4.3 g cm-3.もろく,平らでない断口を生じる.へき開は{011}で明瞭のこともある.金属光沢,濃い真ちゅう黄色,条痕緑黒色.塊状の集合体として産出することが多い.閉管中で加熱すると爆発して硫黄を昇華する.硝酸に溶けて硫黄を遊離する.H2S雰囲気中で,CuOとFe2O3を徐々に熱して合成することができる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄銅鉱」の意味・わかりやすい解説

黄銅鉱
おうどうこう
chalcopyrite

CuFeS2を 34.5%含む真鍮黄色の銅の主要な鉱石鉱物。正方晶系,結晶は普通四面体をなすが,多くは緻密塊状,断口不規則。脆弱,硬度 3.5~4,比重 4.1~4.3,金属光沢,真鍮黄色であるが,変色して青,紫色を呈する。条痕は緑黒色,不透明,反射光による異方性は弱い。微量のスズ,亜鉛,金,銀などを含む。閉管中で加熱すると,しばしば破裂し硫黄を昇華し,木炭上の加熱で溶融して磁性を帯びた小球を生じ,残渣は塩酸に溶ける。吹管分析で強い青色炎を示す。硝酸に溶けて硫黄を分離し,青色の溶液になる。各種のマグマ源鉱床に多い。日本では含銅硫化鉄鉱鉱床,黒鉱鉱床,接触交代鉱床,熱水鉱床から産出する。変質して,輝銅鉱,銅藍,ケイ孔雀石,孔雀石などの2次銅鉱物をつくりやすい。英名はギリシア語の Khalkos (銅) と Pyrite (黄鉄鉱) を合せて命名。

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百科事典マイペディア 「黄銅鉱」の意味・わかりやすい解説

黄銅鉱【おうどうこう】

黄色で金属光沢をもつ鉱物。化学式はCuFeS2。自然金に似ているが,条痕(じょうこん)色は帯緑黒色で,展延性がない点が異なる。正方晶系。四面体の結晶が多いが,産状は多くは塊状。比重4.1〜4.3。硬度は3.5〜4で黄鉄鉱より低い。銅の最も重要な鉱石で世界各地に産し,日本では別子,日立,足尾,尾去沢,花岡などが主要な鉱山だった。
→関連項目黒鉱正方晶系

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