改訂新版 世界大百科事典 「竜田祭」の意味・わかりやすい解説
竜田祭 (たつたまつり)
〈神祇令〉(701成立)に定められた祭祀の一つで,風神祭(かぜのかみまつり)ともいう。奈良県生駒郡三郷町立野に鎮座する竜田神社(現,竜田大社)で孟夏(4月)と孟秋(7月)の2度行われた。朝廷より使いを差遣して祭りを行わせるもので,《延喜式》では4月,7月とも4日に行うと規定した。また同書に載せる〈竜田風神祭祝詞〉によれば,竜田の小野に天御柱(あめのみはしら)命,国御柱命をまつったことを述べ,竜田の神に幣帛をたてまつって,天下公民のつくる稲が悪風,荒水にあわぬよう祈っている。この祭りの初見は,広瀬神社(現,奈良県北葛城郡河合町)で行われる大忌祭(おおいみのまつり)とともに《日本書紀》天武4年(675)4月条に官人を遣わして,風神を竜田の立野に,大忌神を広瀬の河合にまつらしむとあるのがそれで,以後《日本書紀》の巻末まで毎年4月,7月に祭りを行った記録がみえる。8世紀には祭料は,神戸(かんべ)の租稲をもってこれにあてたことが《大倭正税帳》にみえる。中世以降,廃絶したが,現在は風鎮祭として毎年6月28日より7月4日まで行っている。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報