精液の証明(読み)せいえきのしょうめい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「精液の証明」の意味・わかりやすい解説

精液の証明
せいえきのしょうめい

臨床医学では生殖能力の有無を判定するための検査をいい、社会医学、とくに法医学においては性的犯罪の実証などのために精液の検査、証明をすることをいう。以下、法医学の観点から述べる。

 精液は約90%が水分で、残りの10%の固形成分中にはコリンスペルミンフラビン、酸性フォスファターゼなどが含まれる。精液の証明とは、これらの存在を確認することであるが、もっとも確実な証明は精子を検出することである。一般的には、薄い灰白色粘性液が確かに精液なのか、あるいは布や紙の一部に乳白色ないし微黄色不定形に着色し、乾燥した部分が精液によるもの(精液斑(はん))かなどが証明の対象となる。性的犯罪の場合、証拠物件としての布、紙、下着、あるいは被害者の腟(ちつ)内容、陰毛についても検査が必要である。(1)精液斑の検出法 まず精液付着の有無を肉眼的に検査し、ついで暗室内で紫外線照射を行って観察すると、付着部位はフラビンによって青白色の蛍光を発する。ただし、布地染料によって蛍光を発することがあるので注意を要する。さらに精液の付着部分を切り取り、そのままか、あるいは生理食塩液で浸出し、スライドガラス上にのせる。これにフローランス試液を加えて顕微鏡で見ると、精液のコリンによって褐色の針状・菱(りょう)形の結晶が得られる。バルベリオ試液を加えた場合には、スペルミンによって黄色または白色の柱状・星形の結晶ができる。

 このほか、ヒト精液中にのみ多量に存在する前立腺(せん)由来の酸性フォスファターゼを検出する方法がある。この酵素は、サル以外の動物精液には存在しないし、その他のヒト体成分中にもきわめて少ないことから有力な証明となる。この方法は、精液斑の浸出液を酸性基質液に加えると、酸性フォスファターゼによってフェノールが生成され、フェノール試液によって青色となることを利用する。(2)精子検出法 精子を検出する場合は、新鮮なものであれば、そのままスライドガラス上にとって顕微鏡で見る。このほか、精液斑を生理食塩液で抽出し、墨汁一滴を加えて検鏡する方法、精子の頭部を赤く尾部を青く染色して検出する方法(バエッキー法)、精子の頭部を淡赤色に染色して検出する方法(コリン‐ストッキー法)などがある。

[栗原文男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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