翻訳|fluorescence
物質に光を当てたとき、その物質から発する光をいう。当てた光を取り除くと、ただちに発光が止まるのが蛍光で、発光がその後も続くのがリン光である。
物質に光が当たると、物質内の化合物は、基底状態(エネルギー的に低い状態)から励起状態(エネルギー的に高い状態)になる。励起状態は不安定で、外部からのエネルギーが加わらなくなると基底状態に戻ろうとする。基底状態から励起状態に移るとき、その物質は光を吸収し、励起状態から基底状態に戻るとき発光する。励起状態にはスピン波動関数の性質により、スピンが対になっている一重項状態と、スピンが向きをかえた三重項状態がある。励起状態から基底状態に戻るとき、一重項状態から直接基底状態に戻るのが蛍光で、一重項状態からいったん三重項状態に立ち戻り、その後に基底状態に戻るのがリン光である。蛍光の寿命は10-9秒と短く、リン光は10-6秒で約1000倍長い。蛍光を発する物質を蛍光体という。しかし、一般に物質は光を受けると励起状態に遷移し、同時に基底状態に戻ろうと、受けた光と同じ波長の光を発光している。発光している光がホタルの光のような色である場合を蛍光といっているのである。
蛍光の波長は物質によって異なるので、物質の同定にも利用されている。一般に気体では輝線スペクトル、液体では帯スペクトル、固体では連続スペクトルとなる。固体から発生する蛍光スペクトルは今日半導体として活用されている。
[下沢 隆]
『R・S・ベッカー著、神田慶也訳『けい光とりん光』(1971・東京化学同人)』▽『M・ボル、J・ドゥルニョン著、稲村耕雄・中原勝儼訳『色彩の秘密』(白水社・文庫クセジュ)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ルミネセンスと同義に用いることもあるが,りん光と対照して用いる場合は,励起に瞬間的に追随して発光し,強度がいちじるしい温度依存性をもたない発光部分をいう.瞬間的な立ち上がりと減衰を示すといっても,実際は,10-7 s 以下程度であって,物質によってはもっと長いものもある.ただし,時間的変化は必ず指数関数的である.π電子系の有機蛍光体の場合は,励起一重項状態から基底状態への許容遷移が蛍光とよばれ,三重項状態からの遷移がりん光とよばれる.前者の減衰時定数は 10-8 s 以下が多く,後者では2けた以上大きい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
励起状態にある物質が基底状態へもどる際に,電子遷移に伴って放出される光。ルミネセンスと同義に用いられることもあり,また,励起が終わると直ちに発光が止まるものを蛍光と呼び,しばらくの間発光が持続するリン光と区別することもあるが,現在では発光機構で区別されることも多い。
→ルミネセンス
執筆者:三須 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…(6)圧電気 圧力(衝撃)を加えた場合,結晶の両端に異種静電気の帯電がみられる圧電性(圧電気)を示すものもある。(7)ルミネセンス 蛍石のように鉱物の一部には,光,熱,電子線などのエネルギーを与えた場合,これを吸収してその鉱物特有の波長の光を発生する特性(ルミネセンス)をもつものがあり,外部よりエネルギーを受けている間のみ発光する場合を蛍光,その後もしばらく発光が持続する場合をリン光と呼ぶ。約200種の鉱物は紫外線の照射により蛍光またはリン光を発生するため,鉱物の鑑定,特別の鉱石の探鉱などに利用されている。…
…物質をなんらかの方法で励起し,その励起を中止した後に長時間にわたって発光する場合,これをリン光という。蛍光が10-9秒程度の平均寿命であるのに対して,リン光は数秒に達することもある。ただし,このような区別は明確なものではなく,発光の機構によって定義することも多い。…
※「蛍光」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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