糸屋(読み)いとや

精選版 日本国語大辞典 「糸屋」の意味・読み・例文・類語

いと‐や【糸屋】

〘名〙 糸類を売る店。また、売る人。特に近世京都の小川通り一条上ル付近の店が著名で、その売り子は売色もした。
言経卿記‐天正一六年(1588)六月二二日「塩屋後室・糸屋女房衆等飡呼之」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「糸屋」の意味・わかりやすい解説

糸屋
いとや

糸を売買する商人。糸の種類に麻糸、絹糸木綿糸、毛糸、人造糸など、用途に織糸、組糸、編糸、縫糸(手縫糸とミシン糸)など、産地に国産の和糸と中国産の白糸(唐糸)があるので、その流通機構は複雑で、不明な点が多い。

 卸売り問屋仲買もあるが、一般には小売りのもので糸商(いとあきない)ともいった。しかも、絹、木綿の縫糸と組紐(くみひも)などを扱っていた。組紐は自家生産のものもあった。織糸、組糸などは種類別の問屋、仲買から織屋、組師に直接に卸売りされていた。小売りの糸屋の成立は、白糸にかわって和糸が進出してきた18世紀からのこととみられる。それまで縫糸は、絹、木綿ともに多く自給生産であった。縫糸が商品化されてからは、絹糸は和糸問屋、木綿糸は桛糸(かせいと)問屋から小売りの糸屋は入手した。やがて、縫い針、鋏(はさみ)、へら(篦)などの裁縫用具も売り、近代では綿屋が兼業することもあり、現代では手芸品店、小間物屋に吸収され、ミシン糸なども取り扱っている。

遠藤元男

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