糸を売買する商人。糸の種類に麻糸、絹糸、木綿糸、毛糸、人造糸など、用途に織糸、組糸、編糸、縫糸(手縫糸とミシン糸)など、産地に国産の和糸と中国産の白糸(唐糸)があるので、その流通機構は複雑で、不明な点が多い。
卸売りの問屋、仲買もあるが、一般には小売りのもので糸商(いとあきない)ともいった。しかも、絹、木綿の縫糸と組紐(くみひも)などを扱っていた。組紐は自家生産のものもあった。織糸、組糸などは種類別の問屋、仲買から織屋、組師に直接に卸売りされていた。小売りの糸屋の成立は、白糸にかわって和糸が進出してきた18世紀からのこととみられる。それまで縫糸は、絹、木綿ともに多く自給生産であった。縫糸が商品化されてからは、絹糸は和糸問屋、木綿糸は桛糸(かせいと)問屋から小売りの糸屋は入手した。やがて、縫い針、鋏(はさみ)、へら(篦)などの裁縫用具も売り、近代では綿屋が兼業することもあり、現代では手芸品店、小間物屋に吸収され、ミシン糸なども取り扱っている。
[遠藤元男]
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