小間物を売買する商人。小間物は細物(こまもの),あるいは高麗(こま)物,つまり舶来品のことという。17世紀前半,京都では京極通り,大坂では堺筋に小間物屋があった。そのころの小間物は,塗物の容器,箱物,眼鏡,刃物,はさみ,櫛(くし),笄(こうがい),ちろりなどで,《人倫訓蒙図彙》は〈一切の具此所にあり,都鄙におゐて重宝の商人なり〉としている。それらの品物は小間物問屋に集荷され,小売の小間物屋がそれらを仕入れて売った。その後,紅・おしろいなどの化粧品,櫛・笄・簪(かんざし)や元結・丈長(たけなが)などの髪飾り,紙入れ・タバコ入れなどの袋物,きせるなどを主にするようになった(《守貞漫稿》)。店売のほかに行商の小間物売がいた。おもに女性の生活用品を扱っていたから,顧客は女性が多く,女性の小間物売も少なくなかった。品物をいれた箱の幾段かを大風呂敷に包み,それを背負って得意先を回った。1811年(文化8)の金沢では,商人のうち小間物屋は275軒でもっとも多く9.6%,ついで魚屋・鳥屋の205軒,古着屋の180軒であった(《金沢町方絵図名帳》)。地方の都市では,そのほかに玩具も商っていた。近代に入ってしだいに化粧品,服飾品などの種類が増加し,需要も増大するにともない,小間物屋の多くは化粧品,服飾品などの専門店に分化する傾向にあり,また,行商の小間物売はほとんど見られなくなった。
執筆者:遠藤 元男
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