細胞質多角体病(読み)さいぼうしつたかくたいびょう(英語表記)cytoplasmic polyhedrosis

改訂新版 世界大百科事典 「細胞質多角体病」の意味・わかりやすい解説

細胞質多角体病 (さいぼうしつたかくたいびょう)
cytoplasmic polyhedrosis

昆虫ウイルス病の一種。主にカイコなど鱗翅(りんし)目昆虫の幼虫が感染・発病する。ウイルスは直径50~70nmの正二十面体で,各頂点に突起をもち,核酸は二本鎖RNAである。普通ウイルス粒子は,直径3~6μmの多角体と呼ばれるタンパク質の封入体中にランダムに埋めこまれている。多角体には正二十面体,正六面体,不整型など種々のものがあり,これらの形はウイルスの種類あるいは系統によって一定している。多角体で汚染された餌を昆虫が食下すると,消化管の中で多角体が溶けてウイルス粒子が遊離し,中腸組織に感染する。感染組織は中腸に限られ,おもに円筒細胞の細胞質で増殖し,多数のウイルス粒子は同時に形成される多角体に埋めこまれる。昆虫の幼虫が感染すると食欲が減退し,発育不良となり,末期には多角体が混ざって白味がかった軟糞(なんぷん)を排出し,ついに致死する。致死の主因はウイルスの増殖によって中腸の栄養吸収機能が侵されることにあるが,それに伴って腸内細菌が異常繁殖し病勢をいっそう悪化させる。感染幼虫を解剖すると,中腸が多数の多角体の形成で白濁しているのが肉眼で認められる。しかし幼虫のごく末期に感染した場合は,発病・致死することなく,そのままさなぎから成虫になり,雌の産卵もほぼ普通に行われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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