日本大百科全書(ニッポニカ) 「絞首台からのレポート」の意味・わかりやすい解説
絞首台からのレポート
こうしゅだいからのれぽーと
Reportáž psaná na oprátce
チェコスロバキアの作家フチークの作品。1945年刊。原題は『絞首索にかかりながら書かれているルポルタージュ』。反ナチス地下運動中ゲシュタポに逮捕投獄され過酷な拷問を受け、ついに処刑された作者が、その拘禁中に支援者の看守からひそかに紙と鉛筆を得て綴(つづ)ったもの。この原稿は監視の目を盗んで持ち出され、解放後、妻グスタにより公刊された。党活動や抵抗運動の思い出、獄中でのさまざまな事件が、明敏な人間観察を伴って描写され、単なる記録を超える価値をもつ。この極限状況で、生前の勝利をあきらめながらもなお未来と同志を信ずる者の不思議な明るさが、この作品の大きな支えとして感じられる。
[飯島 周]
『栗栖継訳『絞首台からのレポート』(岩波文庫)』