改訂新版 世界大百科事典 「美松里遺跡」の意味・わかりやすい解説
美松里遺跡 (びしょうりいせき)
Misongni-yujǒk
朝鮮民主主義人民共和国,平安北道義州郡美松里の鴨緑江下流域の左岸地帯にある石灰岩の洞窟遺跡。1954年に発見され,59年に発掘調査された。洞窟は,現在,南側を流れる小川から高さ約16mの所に南側入口の底面がある。入口の天井の高さは約2m,奥行きが15mほどの規模である。主として洞窟内の入口付近に堆積した遺物包含層としては,上・下の2層がある。上層は,黒色腐植土からなり,無文土器(青銅器)時代に属する遺物と遺骨が少なからず出土した。入口近くでは,2個体の人骨が比較的整然とした状態で見つかり,石斧,銅斧,石製紡錘車や無文土器などが出土した。洞窟の内部へさらに入った所でも,散乱した状態ではあるが,人骨が検出されており,その数は合計11個体分以上になる。ここで副葬品を伴う埋葬が行われたと推測され,さらに上層出土の無文土器が2型式に細分されることを考え合わせると,ある時期には住居地でもあったことを思わせる。下層は,黒色の腐植土からなり,櫛目文土器(新石器)時代に属する。出土遺物は少なく,櫛目文土器片若干と,骨片,骨錐,石錘2個,石鏃1個,玉石製装飾品1個などにすぎない。
執筆者:西谷 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報