改訂新版 世界大百科事典 「耕土培養」の意味・わかりやすい解説
耕土培養 (こうどばいよう)
農耕地土壌を培い養うことを意味する言葉であるが,1952年に制定された〈耕土培養法案〉に基づく耕土培養事業の実施に伴いひろく日常的に使用されるようになった新語である。
耕土培養事業の主目的は,農耕地土壌生産力の維持増強,とくにさしあたっては,全国に広く分布し,不良土壌の最も重要な原因をなしている酸性土壌,水稲秋落ち田およびリン酸欠乏土壌の防止改善を土壌化学的見地から実施することにある。酸性土壌矯正のため石灰質肥料,ケイ酸質肥料,苦土肥料や無機質リン酸肥料を,秋落ち水田改良のため褐鉄鉱・鉄粉・肥鉄土などの含鉄物やケイ酸質肥料を,水稲秋落ち防止のため固形肥料および硫酸塩をほとんど含まない無硫酸根肥料を,リン酸欠乏土壌改良防止のため溶成リン肥や固形肥料などの施用をすすめた。この事業の結果,68年度までに秋落ち水田約22万ha,酸性土壌約20万ha,特殊土壌(アカホヤ)約2万5000haが改良された。耕土培養の結果は秋落ち水田改良により平均11%,酸性土壌,アカホヤ改良により20%程度の増収がもたらされた。
耕土培養は広く解釈すると地力の維持増進をはかることとも言える。この場合は上記諸施策に加えて,堆厩肥(きゆうひ)などの粗大有機物を土壌に施用することが重要になり,不良土壌の改良から,高収穫土壌の造成に力点が移るようになる。
執筆者:熊沢 喜久雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報