改訂新版 世界大百科事典 「肉弾三勇士」の意味・わかりやすい解説
肉弾三勇士 (にくだんさんゆうし)
上海事変下の軍事美談。爆弾三勇士ともいう。1932年2月22日,上海廟行鎮の戦闘で工兵隊一等兵の江下武二・北川丞・作江伊之助の3名が鉄条網破壊のため爆薬を装てんした破壊筒を抱いて突入,生還に失敗し爆死した。しかし陸軍はこの事故を覚悟の自爆であるとし,3名を〈軍神〉として顕彰する方針をとり,新聞も〈悲壮忠烈の極〉などと軍事美談としてキャンペーンをくりひろげた。そのため,この事件は一大センセーションをまきおこし,《朝日新聞》《毎日新聞》によって三勇士の歌が懸賞募集されたり,全国から新聞社を通じて遺族へ弔慰金が寄せられた。また3名の原隊のある久留米市では三勇士の銅像が建設された。そして,ラジオ放送や映画・演劇・講談・レコードなどを通じて三勇士ものが異常な勢いで広がり,国民の間に,満州事変以来の軍国主義的な世論をさらに高揚させるのに大きな影響を与えた。
執筆者:功刀 俊洋
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