肝性糸球体硬化症

内科学 第10版 「肝性糸球体硬化症」の解説

肝性糸球体硬化症(肝疾患と腎障害)

(2)肝性糸球体硬化症(hepatic glomerulosclerosis)
概念
 肝硬変では種々の糸球体病変を示すことが知られており,これらのなかにはB型肝炎やC型肝炎に伴う腎炎が多数含まれていたものと思われる.これらのほかに肝硬変に特異的な腎病変としてIgA腎症と同様にメサンギウム領域にIgAの沈着をみる糸球体病変がみられ,肝性糸球体腎炎あるいは肝性糸球体硬化症とよばれる.
病因
 IgAを抗体とする免疫複合体による腎炎と考えられ,肝機能低下に伴う肝内網内系の機能低下,門脈系のシャント形成が免疫複合体の腎への沈着に関係していると考えられている.
臨床像
 軽度の蛋白尿や顕微鏡的血尿を呈する.ネフローゼ症候群や腎機能低下例もまれに認められる.血清IgA値は通常高値で,補体価は正常のことが多い.
腎組織像
 メサンギウム細胞の増生やメサンギウム基質の増加などメサンギウム増殖性腎炎の組織像を呈する(図11-6-13).蛍光抗体法ではメサンギウム領域にIgA(図11-6-14)やC3,IgGの沈着を認める.電顕ではIgA腎症と同様にメサンギウム領域や内皮下に沈着物を認める.
治療
 肝硬変に対する治療が重要で,腎に対する特別な治療法は知られていない.[山辺英彰]
■文献
Gines P, Schirer RW: Renal failure in cirrhosis. N Engl J Med, 361: 1279-1290, 2009.
Schena FP, Alpers CE:Membranoproloferative glomerulonephritis, dense deposit disease, and cryoglobulinemic glomerulonephritis. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp 675-683, Elsevier, St.Louis, 2010.
島田美智子,山辺英彰:腎障害をきたす全身性疾患-最近の進歩 ウィルス性肝炎.日内会誌,100: 1308-1312, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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