肺炎桿菌(クレブシエラ)感染症

内科学 第10版の解説

肺炎桿菌(クレブシエラ)感染症(Gram 陰性悍菌感染症)

(4)肺炎桿菌(クレブシエラ)感染症(Klebsilla infec­tion)
疾患概念・疫学
 肺炎桿菌は腸内細菌科のGram陰性桿菌であり,セラチア属,エンテロバクター属と比較的近縁の細菌である.クレブシエラ属ではKlebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)以外にK. oxytocaとK. granulomatisの2菌種がヒトに疾病を起こすとされている.本菌はヒト,動物の大腸で正常細菌叢を構成する細菌の1つであり,自然界からも広く分離される.肺炎桿菌は健常なヒトにも尿路感染症,肝膿瘍,肺炎を起こす病原菌である.しかしながら,多くの場合は院内で抵抗力の低下した宿主に発症する.肺炎,尿路感染症以外に胆道感染症,腹膜炎,敗血症,カテーテル感染症などの院内感染が認められる.Gram陰性菌による敗血症の起炎菌としては大腸菌についで多い.本菌により発症する肺炎は,従来からFriedländer肺炎として大酒家にしばしばみられる重症肺炎として知られている.市中肺炎の頻度としては全体の5%前後である.
病態生理
 本菌にはエンドトキシンや外毒素など多くの病原性因子が知られている.また,本菌には多量の莢膜多糖体を産生する株が多く,このためコロニーはムコイド型を呈する.莢膜は好中球による貪食に抵抗し,マウス感染実験における本菌の50%致死量は10 cfu/mouse以下になる.K1,K2などの莢膜型が重要とされる.
鑑別診断
 グルコース非発酵Gram陰性桿菌による尿路感染症,胆道感染症,肺炎,敗血症との鑑別が必要になる.
臨床症状・経過・予後
 大酒家,肝硬変やコントロール不良の糖尿病患者に重症肺炎や肺化膿症を発症する.典型的には咳,発熱とともに濃厚な“干しぶどうゼリー状”の血液を混じた痰を呈する.また,胸部X線では大葉性肺炎の像をとり,浮腫状になった肺のため“bulging fissure sign”がみられるとされる.しかしながら,臨床像のみでは本菌による肺炎を診断することは困難である.基礎疾患のコントロールが不良な宿主における重症肺炎や敗血症の予後は不良である.
検査成績
 痰検体などのGram染色所見で,厚い莢膜を有するGram陰性桿菌が認められる場合がある(図4-5-12).尿,胆汁,痰,胸水,血液などの検体から本菌を分離,同定することで本菌感染症を診断できる.
治療
 本菌は染色体上にペニシリナーゼ産生に関与する遺伝子を保有するため,ペニシリン系薬は無効であり,第3世代セフェム系薬が第一選択薬である.近年,拡張型スペクトルβ-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌が増加しており,わが国における分離頻度は3%程度である.これらの菌に対してはカルバペネム系や第4世代セフェム系薬が使用される.また,近年まれではあるが,肺炎桿菌カルバペネマーゼ株 (Klebsiella pneumoniae carbapenemase)も報告されている.[大石和徳]
■文献
荒川宣親:肺炎桿菌.病原菌の今日的意味(松本慶蔵編), pp353-361,医薬ジャーナル社, 2010.
Donnenberg MS: Enterobacteriacae. Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th ed (Mandell GL, Bennet JE, et al eds), pp2815-2833, Churchill Livingstone, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報