改訂新版 世界大百科事典 「胆囊造影」の意味・わかりやすい解説
胆囊造影 (たんのうぞうえい)
cholecystography
胆道造影ともいう。胆囊や膵臓などの異常をみつけるためのX線検査の一つ。造影剤を,胆管,胆囊内に排出させるか,注入することにより,その形や機能を観察し,胆道や膵臓の病気を診断する方法である。造影剤を服用させるか(これを経口法という),静脈注射したのち,肝臓から胆道に造影剤が排出されるのを待って,X線撮影を行う方法を間接法という。経口法は,検査前夜にテレパーク,ビロプチンのようなヨード造影剤をのみ,翌朝撮影を行う,最も簡便な方法である。静注法は,水溶性ヨード造影剤(ビリグラフィン)を静脈注射したのち,20~60分にわたり,その排出過程を観察するもので,総胆管の形もみることができる。通常,双方とも引きつづいて卵黄などの胆囊収縮剤を与え,胆囊収縮機能をも観察する。いずれも簡便な方法であるが,経口造影剤の吸収不良時や,肝臓障害や胆道の閉塞により造影剤の胆汁中排出が障害されているときには,造影されないという致命的弱点もある。その際には,胆道内に直接造影剤を注入し,撮影する直接造影法が用いられる。これには,細い穿刺(せんし)針を用い,体外から,皮膚・肝臓を穿刺し,肝内胆管に造影剤を入れる経皮経肝胆道造影法percutaneous transhepatic cholangiography(PTC)と十二指腸内視鏡を用い,胆管十二指腸開口部(ファーター乳頭)を観察しながら,その中に細い管を挿入し,造影剤を注入する内視鏡的逆行性胆管膵管造影法endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)の二つの方法がある。いずれも,肝機能障害や胆管流通障害による胆汁分泌の障害が生じているときでも,十分な造影剤を注入することにより明りょうな胆道像が観察できるすぐれた方法だが,技術的に難しいことと,ときに危険を伴うことがあるため,入院を必要とする。これらの検査により,胆囊・胆管結石(胆石),胆囊機能不全(ジスキネジー),胆管拡張,胆管癌,慢性胆囊炎,膵頭部癌,慢性膵炎,胆管良性狭窄症などの疾患が診断できる。
執筆者:松崎 松平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報