不随意に尿や便をもらす状態をいう。尿をもらすものを尿失禁,便をもらすものを大便失禁という。尿失禁には以下のものがある。(1)真性尿失禁 尿道括約筋の器質的不全で起こる。前立腺,直腸,骨盤などの外傷や手術が原因。(2)溢流(いつりゆう)性尿失禁 尿閉状態に尿道括約筋不全が合併したもので,前立腺肥大症,尿道狭窄でみられる。(3)緊張性尿失禁 起立時や咳払いで腹圧上昇に伴って起こる失禁をいう。老年婦人に多い。(4)神経因性膀胱に伴う尿失禁。(5)逼迫(ひつぱく)性尿失禁 尿意が起こってトイレに行くまで我慢できないもの。重症膀胱炎,脳脊髄疾患にみられる。(6)尿道以外からの尿失禁 尿管が膀胱以外に開口しているもの(異所性尿管開口)。膀胱外反症,尿道上裂などでみられる。大便失禁は,主として直腸,肛門括約筋の支配神経が侵されて起こる場合と,肛門括約筋そのものが外傷などで損傷をうけた場合にみられる。尿失禁,大便失禁とも対症療法に加えて原因療法を行う。
執筆者:小磯 謙吉
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大便・小便が自分の意志にかかわらず不随意に排泄(はいせつ)されることをいう。失禁は老人、意識障害のある者、脊髄(せきずい)損傷者、泌尿器疾患患者に多い。排泄されたことが本人に全然わからない場合と、便意・尿意を感じると同時に排泄されてしまう場合とがある。前者はおむつなどを使用して排泄物を受けねばならないが、後者は時間ごとの排泄を試みさせたり、排泄時間を見計らって柔らかいゴム便器をあてがって排泄させることができるため、かならずしもおむつは必要ではない。後者においては、むしろおむつを使用しないほうが本人の自尊心を守ると同時に、退行現象を防ぐことにもなるし、床ずれも防げる。おむつを使用する場合は柔らかい布を用い、カバーも通気性のくふうがされているものを選ぶ。紙おむつも、大きさ、厚さ、材質など、さまざまなものが市販されているので、目的によって使い分けるとよい。排泄されたらすぐに取り除き、局所を清潔にして新しいものに交換する。
[山根信子]
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