脱藩官僚(読み)だっぱんかんりょう

知恵蔵 「脱藩官僚」の解説

脱藩官僚

国益より省益を優先する国家官僚の在りかたを嫌い官僚を辞めたが、改革の志を失っていない元官僚のこと。これに対し、官僚を辞めても霞が関代弁をしている元官僚は「過去官僚」という。「官僚の手の内を知り尽くしている人間だからこそ、国民のため、できることがある」という思いを持った江田憲司が中心となって、2008年6月「脱藩官僚の会」が旗揚げした。正式名は、「官僚国家日本を変える元官僚の会」。発足人は、以下の8名。江田憲司(衆議院議員、元内閣官房・通商産業省)、高橋洋一(東洋大学教授、元財務省)、寺脇研(京都造形芸術大学教授、元文部科学省)、岸博幸(慶應義塾大学教授、元経済産業省)、福井秀夫(政策研究大学院大学教授、元建設省)、上山信一(慶應義塾大学教授、元運輸省)、木下敏之(木下敏之行政経営研究所代表、元農林水産省・佐賀市長)、石川和男(新日本パブリック・アフェアーズ上級執行役員、元経済産業省)。「脱藩官僚の会」の活動の主軸は、官僚による改革骨抜きに機先を制し警鐘を鳴らす「緊急アピール」と、じっくりした議論を踏まえた「政策提言」の二本立てになるという。改革骨抜きの手口には、たとえば、サボタージュして日程的に不可能にしてしまうこと、「てにをは」を加筆して法案の意味を変えてしまうこと(これを「霞ヶ関文学」という)などがある。
江田が橋本内閣の政務秘書官、高橋と岸が小泉内閣の竹中大臣のブレイン、寺脇はゆとり教育の旗振り役だったが、「脱藩官僚の会」としては、党派性のない政策集団をめざし、ゆくゆくは霞が関に対峙(たいじ)しうるシンクタンクに発展させたいという。脱藩官僚の会著『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』(朝日新聞出版、08年9月)、江田憲司・高橋洋一共著『霞が関の逆襲』(講談社、08年9月)が刊行されている。

(高橋誠 ライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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