日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳血管造影法」の意味・わかりやすい解説
脳血管造影法
のうけっかんぞうえいほう
脳動脈内に造影剤を注入して脳血管をX線撮影し、血管の異常や偏位などから脳病変を診断する検査法で、脳血管撮影、脳血管写ともいう。ポルトガルのモーニスMonizが1927年創始したもので、脳動脈造影法と脳静脈造影法がある。
脳動脈造影法は、造影剤を注入する動脈により頸(けい)動脈造影法と椎骨(ついこつ)動脈造影法に分け、その手技により動脈直接穿刺(せんし)法とカテーテル法(セルディンガーSeldinger法)に大別される。動脈直接穿刺法は、総頸動脈を経皮的に直接穿刺し、約10ミリリットルの造影剤(水溶性ヨード剤)を急速に注入し、X線による単発あるいは連続撮影により動脈相、毛細血管相、静脈相を得る。現在もっとも広く行われているのはカテーテル法で、経皮的に大腿(だいたい)動脈を穿刺し、カテーテルを動脈内に挿入し、透視下に先端を目的とする動脈まで進めて、造影を行う方法である。1回の穿刺で選択的に左右の内、外頸動脈、椎骨動脈を造影できる利点がある。なお、大腿動脈以外では上腕動脈、腋窩(えきか)動脈からカテーテル法を行うことができる。画像処理としてサブトラクション法がある。
脳血管造影法は、脳動脈閉塞(へいそく)や脳動脈瘤(りゅう)などの脳血管障害をはじめ、脳腫瘍(しゅよう)(血管偏位や異常血管像により診断)、頭蓋(とうがい)内出血(無血管野や血管偏位により診断)などの診断に必須(ひっす)の検査法である。そのほか人工塞栓(そくせん)術、動脈注射目的にも行われる。ヨード過敏症、腎(じん)不全、多発性骨髄腫(こつずいしゅ)には禁忌とされている。
[加川瑞夫]