内出血は出血量を外表面から評価することが困難です。しかし、
そこで病院にいる医師も、意識や呼吸・循環の状態が悪い傷病者、高エネルギー事故の傷病者の場合は、正確な診断が下されるまでは、この3カ所の内出血があるものと疑いながら診察を行っています。
また、単純な骨折といえども大腿骨のような大きな骨の損傷の場合は、それだけで1ℓ程度の出血が起こりえるので、注意が必要です。
肋骨の骨折、肺の損傷などにより胸腔に血液が貯留し、
胸腔に大量の血液が貯留すると、内出血による失血以外に、肺を圧迫して呼吸状態を悪化させることがあります。そのため、胸腔ドレーンと呼ばれるチューブを胸部の皮膚を貫いて胸腔内に挿入し、胸腔内に貯留した血液を抜く処置を行います。
この処置を行ったあと、呼吸状態が改善してチューブから流出してくる血液量が次第に減少してくる時には、このチューブのみによる治療で回復する場合も多いのですが、呼吸状態が改善しなかったり、チューブから出てくる血液量が非常に多かったり、急速に血液が流出してくる場合は手術を選択し、止血を行うことになります。
胸部の大血管が損傷したために大量の血胸が貯留していることもまれではなく、その場合は治療が難しく、生命の危険にさらされることもあります。
肝臓、
治療は、ごく少量の出血の場合には自然に止血されることもありますが、出血が多い時、出血が急激に増えている時、呼吸や循環の状態が悪い時などは、積極的に止血を行わなければなりません。この場合は手術が最も一般的ですが、最近は、場合によってはカテーテルによる血管内治療(TAE:Trans Arterial Emboli-zation)によって、さまざまな物質を注入して出血している血管を詰める治療法も普及してきています。
骨折単独で死亡することがあるとは想像しにくいかもしれませんが、骨盤骨折はそれだけで死亡の原因になることがあります。
この場合は、背中~腰~臀部にかけるスペース(後腹膜腔)に大量の血液が貯留します。交通事故や墜落事故で腰を強打した人に、骨盤骨折はよく起こります。骨盤骨折も病院に到着する前に正確に診断することは困難です。無理な触診をすると、さらに出血が増える場合があるので、救急隊員も慎重に観察することになります。病院に搬入後は、X線検査やCTなどで確定診断をします。
治療法としては、もちろん手術もありますが、カテーテルによる血管内治療(TAE)が、止血の手段として非常に有用とされています。
骨盤以外の骨折が直接的な死因になることは少ないのですが、大腿骨のような大きな骨の骨折や、数多く骨折した場合などは総出血量が多くなり、生命の危険につながることがあります。
* * *
以下に、各損傷に伴うおよその出血量を示します。
・血胸 1000~3000ml
・腹腔内出血 1500~3000ml
・骨盤骨折 1000~4000ml
・大腿骨 1000~2000ml
・下腿骨 500~1000ml
・上腕骨 300~500ml
・床や衣類の血液 約30㎝四角で100ml
山崎 元靖
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
血液の全成分が血管外に出ることを出血といい、血液が体表から体外に出るものを外出血、血液が組織・臓器内や体腔(たいくう)内に出ても体内にとどまっている状態を内出血と呼び分けている。なお、出血は、血管壁の破綻(はたん)によっておこる破綻性出血と、血管壁の破綻がなくてもおこる漏出性出血に分けられたり、出血がおこる血管の種類によって、動脈性出血、静脈性出血、毛細管性出血とに分けられる。
[渡辺 裕]
… 出血している血管の種類により,鮮紅色の血液が拍動性に出血する動脈性出血,暗赤色の血液がゆるやかに出血する静脈性出血,どこからともなくにじみ出てくる毛細管性出血とに分けられる。また,体外への出血の外出血と,組織内または体腔内にみられる内出血とがあり,うち皮下組織内の出血を皮下出血という。出血の大きさにより,点状出血,斑状出血,組織内に広い範囲にわたってみられる血性浸潤などがあり,また1ヵ所に血液がたまって腫瘍状を呈する血腫,体腔または管状・囊状の臓器内に出血してたまった血瘤がある。…
※「内出血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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