家庭医学館 「腹膜の良性腫瘍」の解説
ふくまくのりょうせいしゅよう【腹膜の良性腫瘍 Benign Peritoneal Tumor】
腹膜のうち、腹壁(ふくへき)をおおっている膜を壁側腹膜(へきそくふくまく)(コラム「腹膜のしくみ」)といい、ここに発生する腫瘍を腹膜腫瘍といいます。
壁側腹膜から腫瘍が発生することはきわめてまれなのですが、ときに腹膜中皮腫(ふくまくちゅうひしゅ)という腫瘍が発生することがあります。
[症状]
腫瘍が発生した当初は無症状のことが多く、あっても腹部が張る感じや重苦しさ程度です。
嘔吐(おうと)、腹痛などのはっきりとした症状はありません。
そのうちに腹水(ふくすい)がたまり始め、やっと医療機関を受診しますが、結核性腹膜炎やがん性腹膜炎と診断されることが多く、腹水穿刺(ふくすいせんし)(腹部に針を刺し、腹水を採取して調べる検査)を行なって腹膜中皮腫とわかるというケースが少なくありません。
[治療]
手術をして腫瘍を取り除くことはむずかしく、腹水を排除して腹圧を下げ、腹部の張った感じや重苦しさなどの苦痛となる症状をやわらげるのが治療の中心です。
腹膜中皮腫は、良性腫瘍に分類されていますが、性質は悪性で、予後はよくありません。