膵臓損傷(読み)すいぞうそんしょう(その他表記)Pancreatic injury

六訂版 家庭医学大全科 「膵臓損傷」の解説

膵臓損傷
すいぞうそんしょう
Pancreatic injury
(外傷)

どんな外傷か

 膵臓は胃の後面の後腹膜腔(こうふくまくくう)に位置するために、前方からの外力では損傷を受けにくい臓器です。

 損傷を受けたとしても初期に診断することは難しく、膵臓液が腹腔内に漏れて激しい腹痛を訴えるようになってから膵臓損傷が疑われます。

原因は何か

 日本では刺創(しそう)銃創(じゅうそう)は少なく、交通事故が圧倒的に多くなっています。

 とくに、ダッシュボードやハンドルなどの直達(ちょくたつ)外力(外から加わる直接的な力)によって損傷を受けることが多くなっています。

症状の現れ方

 初期の段階ではおへその上部に軽い痛みを訴えるのみです。

 時間の経過により痛みは強くなり、同時に背部痛、吐き気嘔吐を伴うようになります。

検査と診断

 膵臓の酵素のひとつであるアミラーゼの血中濃度の上昇は膵臓損傷に特異的な所見ではありませんが、一度正常化した値が再び上昇する時には、膵臓損傷を疑うべきです。

 主膵管損傷を伴う膵臓損傷のほとんどは造影CTにより診断することができますが、所見がはっきりしない時は、12時間後に再度造影CTを撮るか、内視鏡的逆行性膵胆管造影を行います。

治療の方法

 主膵管損傷を伴う膵臓損傷に対しては、膵臓温存手術などの複雑な手術は避けて、単純で安全な膵臓摘除術を選択すべきです。

葛西 猛

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「膵臓損傷」の解説

すいぞうそんしょうすいそんしょう【膵臓損傷(膵損傷) Injury of Pancreas】

[どんな病気か]
 自動車事故の際に、ハンドルやシートベルトで腹部を強く圧迫されておこることが多いものです。破裂をおこすと、膵臓内に存在する消化酵素(しょうかこうそ)や血管作動物質がもれ出て急性腹膜炎(きゅうせいふくまくえん)が発生し(「急性腹膜炎」)生命が危険になります。
[治療]
 CT、超音波検査などを行なって、損傷の存在する箇所が膵臓の頭部か、尾部かを調べます。
 損傷が頭部に存在するときは、十二指腸透視(じゅうにしちょうとうし)(十二指腸に水溶性の造影剤を注入し、X線を使って画面に写し出してみる)を行なって、十二指腸損傷(「十二指腸損傷」)を合併していたら、破損箇所を縫合(ほうごう)する緊急手術にふみきります。
 尾部損傷の場合は、逆行性膵胆管造影(ぎゃっこうせいすいたんかんぞうえい)(ERCP=十二指腸ファイバースコープを膵管まで挿入して造影剤を注入し、X線撮影する検査)を行ないます。主膵管や膵管の第1分枝損傷がみられたときは、緊急手術を行ないます。
 膵臓を手術すると、膵液瘻(すいえきろう)(膵瘻(すいろう)=膵管に孔(あな)があいて、膵液がもれる)、仮性膵嚢胞(かせいすいのうほう)(中に液体のつまった袋ができる)、膵炎(すいえん)などの後遺症がおこることがあるので、その有無を調べるための経過観察が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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