家庭医学館 「十二指腸損傷」の解説
じゅうにしちょうそんしょう【十二指腸損傷 Duodenal Injury】
十二指腸損傷は、自動車事故の際、ハンドルに腹部を挟まれておこることが多いものです。自転車やオートバイのハンドルで腹部を打ったり、転落して腹部を打ったりしておこることもあります。
十二指腸は、腹腔(ふくくう)と後腹膜(こうふくまく)にまたがって存在しますが、症状が現われにくい後腹膜側に損傷を受けるケースが多くなっています。
また、受傷してから数時間後から数日後に圧迫された部分が破裂することもあります。このため、発見が遅れることもあります。
膵臓(すいぞう)や胆道(たんどう)の損傷をともなっていることも少なくありません。
[検査と診断]
受傷の状況から十二指腸損傷の可能性があるときは、腹部X線、超音波、CTを駆使し損傷の有無を調べます。
確定診断には、十二指腸透視(とうし)(十二指腸ファイバースコープを使って造影剤を注入し、X線検査で十二指腸を画面に写し出してみる検査)が必要です。
[治療]
損傷の状態によって治療内容が異なります。
■非全層性損傷(ひぜんそうせいそんしょう)
十二指腸透視で破れた孔(あな)(穿孔(せんこう))はみられませんが、ほかの検査で損傷の疑いが否定できない状態です。
絶食し、点滴による輸液療法を行ないます。
■壁内血腫(へきないけっしゅ)
血のかたまりができて、十二指腸の中が閉ざされた状態です。
胆汁性嘔吐(たんじゅうせいおうと)と腹部膨満(ふくぶぼうまん)をともなわない閉塞症状(へいそくしょうじょう)(腹痛、ガスと便の排出停止)がおこります。
絶食と輸液療法を行なうほか、鼻からチューブを胃に入れて、胃の中の圧を減少させます。
この治療を数日続けても症状が消えなければ、手術にふみきります。
■腹腔内破裂(ふくくうないはれつ)
腹腔内に位置する十二指腸が破裂している状態です。
受傷直後から腹痛のほか、腹膜刺激症状(ふくまくしげきしょうじょう)(押すと強くなる腹痛、緊張してかたくなった腹壁)がみられます。
開腹して、破れた部分を縫合(ほうごう)するなどの必要な処置を行ないます。
■後腹膜破裂(こうふくまくはれつ)
後腹膜に位置する十二指腸が破裂している状態です。
腹膜刺激症状がでにくいために気づきにくいのですが、腹部X線やCTでフリー・エア(十二指腸からもれた空気)が証明されれば、この損傷の可能性が高いといえます。
腹腔内破裂と同じ手術をします。
受傷から手術までに時間がたち、腹膜が腸内細菌などによって汚れている場合は、胆管(たんかん)・膵管(すいかん)・十二指腸の減圧と後腹膜のドレナージ(十二指腸からもれ出る液体を体外に導き出すための管を腹部に挿入したままにする)を行ないます。