自作農主義(読み)じさくのうしゅぎ

改訂新版 世界大百科事典 「自作農主義」の意味・わかりやすい解説

自作農主義 (じさくのうしゅぎ)

自作農農地の所有および経営をすることが最も望ましい農業の形態であるとする考え方。この考え方にたつ農業政策が日本で最初に実施されるのは1926年の自作農創設維持補助規則に基づく自作農創設維持政策であり,さらに第2次大戦後の農地改革はこの考え方を徹底させ地主制を解体し広範に自作農を創設した。ついで農地改革の成果を維持する目的で52年に農地法が制定されるが,その第1条において農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めるという法的規定を与えたことにより,自作農主義が戦後農政の基本原則とされることになった。戦前の自作農主義は農本主義的,富国強兵的イデオロギーと結びつき,また農地改革における自作農主義は自作農創設を通じて地主制を解体するという積極的側面をもったが,農地法における場合には消極的,現状維持的性格をもち,60年代以降色あせてきた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の自作農主義の言及

【農地法】より

… 農地法はその第1条の法の目的において〈農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて,耕作者の農地の取得を促進し,その権利を保護し,その他土地の農業上の利用関係を調整し,もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする〉と規定している。このように農地法の究極の目的は〈耕作者の地位の安定〉と〈農業生産力の増進〉におかれており,それを達成するためには耕作者みずからが農地を所有することが最も望ましいという自作農主義をうたうとともに,第2次大戦前の地主制の復活を阻止する意図を宣明した。 農地法は第1章総則,第2章農地及び採草放牧地,第3章未墾地の買収及び売渡し,第4章雑則,第5章罰則の5章94条からなっていたが,その中心部分は権利移動と転用の制限(第2章第1節),小作地等の所有制限(第2章第2節および第5節),利用関係の調整(第2章第3節)におかれ,上記目的を実現するための具体的な規定が行われていた。…

※「自作農主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」