農地法(読み)のうちほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

農地法
のうちほう

昭和 27年法律 229号。農地耕作者自身が所有することを最も適当と認めて,耕作者の農地取得促進,権利保護と土地の利用関係の調整によって,耕作者の地位の安定と生産力増進をはかることを目的とする法律。農地改革原則の恒久化と農地改革の成果維持を目指して,農地または採草放牧地の権利移動および転用の制限 (都道府県知事の許可を必要とする) や小作地などの所有制限などを規定している。 1970年に農業基本法の積極的推進のために改正され,生産性の高い農業経営への土地集中,小作料統制撤廃,不在地主承認など零細農耕制の解消がはかられた。また,1980年には農地の権利移動の許可権限を知事から農業委員会に移し,小作料の物納制を導入するなどの改正が行なわれた。 2000年の改正では農業生産法人に株式会社の参入を認めるなど,農業経営の法人化に向けた規定が加わった。

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デジタル大辞泉の解説

のうち‐ほう〔‐ハフ〕【農地法】

農地は耕作者自ら所有することが最も適当であるとの考えにより、耕作者の農地取得の促進、その権利の保護、農地の利用関係の調整などを図ることを目的とする法律。昭和27年(1952)施行。

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百科事典マイペディアの解説

農地法【のうちほう】

農地改革の成果を維持するため従来の農地調整法自作農創設特別措置法等を統合した法律(1952年)。農地等の権利移動および農地転用の制限(都道府県知事の許可制),小作地の所有制限,小作料の定額金納制等について規定。1970年に,1.農地改革で禁じられていた不在地主を在村地主と同様に小作地平均1haまでの制限つきで認める。2.小作料の最高額統制を撤廃し農業委員会は標準小作料を定める。3.農地移動の上限制限(従来内地平均3ha,北海道12ha)の撤廃。4.農地改革の際国から買った農地で10年以上たったものは貸付が自由になる。5.農業生産法人(農業法人)の農地取得条件の緩和,などの抜本改正がなされた。しかし,この改正は,農地改革のめざした自作農主義を放棄して小農切捨てを図るものとの批判もある。
→関連項目小作制度賃貸借農地調整法

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世界大百科事典 第2版の解説

のうちほう【農地法】

第2次大戦後に実施された農地改革の成果を維持する目的で制定された農地制度に関する基本法。具体的には,農地改革法としての自作農創設特別措置法,農地調整法ならびに自作農創設特別措置法および農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令(譲渡政令またはポツダム政令と通称)の3法令を一本化して1952年に公布された。 農地法はその第1条の法の目的において〈農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて,耕作者の農地の取得を促進し,その権利を保護し,その他土地の農業上の利用関係を調整し,もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする〉と規定している。

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大辞林 第三版の解説

のうちほう【農地法】

耕作者の農地取得の促進、その権利の保護、土地の農業上の効率的な利用を図るための農地関係の調整などを定めた農地に関する基本法。1952年(昭和27)制定。
農地に関する法律の総称。

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知恵蔵miniの解説

農地法

耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を目的に、農地の所有や利用関係の仕組みを定めた法律。1952年施行。農地の売買や相続による所有権の移転、貸借、転用(農地を農地以外のものにすること)などについての制限が規定されている。2009年12月に施行された改正法では、転用規制の厳格化や貸借による農地の権利移動の規制緩和などが行われた。これにより企業やNPO法人の農業参入が増加し、改正法の施行から12年末までの3年間に1071法人が新規参入している。

(2013-2-22)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

農地法
のうちほう

広義には農地に関する法令を意味することもあるが、一般的には1952年(昭和27)制定の「農地法」(昭和27年法律第229号)をさすことが多い。ここでも後者の意味で取り上げる。
 農地法は、農地改革の成果を恒久的に維持すべく、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当」とするとの自作農主義の理念に立脚して、農地の所有および利用関係の調整を図り、「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的」(1条)として制定された。
 この目的に沿って、
(1)農地(または採草放牧地)の所有権移転、あるいは農地以外の目的への農地転用に際しては、都道府県知事等の許可を必要とする(3~5条)
といった制限が加えられることになった。また、第二次世界大戦前にみられたような地主制の復活を阻止するために、
(2)不在地主、および都府県で平均1ヘクタールを超える在村地主の小作地所有を認めない(6条)
(3)当事者の合意による解約の場合を除いて、「賃借人が信義に反した行為をした場合」など「正当の事由」がなければ農地の賃貸借の解除を認めない(20条)
(4)小作料の定額金納ならびに小作契約の文書化を義務づける
(5)小作料額が、田で収穫米価額の25%、畑で収穫主作物価額の15%を超えた場合に、小作人の地主に対する小作料減額請求権を法認する(24条)
など、農地改革の線を引き継ぐ諸規定が盛り込まれた。
 しかし、1960年代以降の工業を基軸とした高度経済成長や、ガット体制において輸入農産物が急増し、その結果農民層の分解が急激に進展した。そうしたなかで、1952年(昭和27)の農地法は、そのままの形では状況にそぐわない面が生じてきた。すなわち、下層農家を中心に離農や兼業化が進み、経営を縮小したり廃止する農家が増大する一方、少数の農家は経営地を拡大しようとした。農地改革は、農地の所有権を地主の手から小作人の手に移すという所有権移転のみを主眼とし、農家の経営形態に直接には触れなかった。旧来の零細な農業経営の体制を「構造改善」して、日本農業の効率化・近代化を図っていくことが、農政にとって重要課題とされた。だが、経済の高度成長と工業化・都市化の進展は、農地の価格を高騰させ、農家がその農地を資産として保有し続けようとする志向を強めた。
 所有権の移転による経営拡大は、農地価格の高騰によってしだいに困難になった。また、離農したり経営を縮小しようとする農家は農地を賃貸借契約によってほかの農家に貸しつけようともしなかった。農地法の下では小作権が強く保護されていたので、いったん農地を貸すと、返してもらうことが困難だったからである。こうして、農地法をすりぬける形での「請負」による経営や、耕地片の授受が進行した。また、農地法では農業生産の担い手として「農家」を想定してきたが、それにとどまらず農業生産法人をはじめ、法人が登場してきた。こういった新たな状況をふまえて、農地法の根幹は維持しつつ、それを手直しし、また農地法の周辺にバイパスを設定して農地の流動化を促進し、農業構造の改善による経営の効率化・近代化を図ることが、資本主義市場経済が高度の発展をし、経済の規制緩和が進む状況下の農政にとっても、重要な課題とされた。
 さらに、1970年代以降になると、農地流動化による農業経営の合理化という問題のほかに、新たな問題が農地利用をめぐって生じてきた。過疎化や高齢化の進展、農産物の過剰化や輸入増大に伴う耕作放棄地や不作付地の増大がそれである。これらは、農地の有効利用を妨げ、国土の荒廃をもたらし、ひいては農業構造の改善を妨げることにもなった。このため、農地法とともに一連の農地関連法を整備し、動員する必要が強まったのである。[暉峻衆三]

改正内容

このようにして、農地法それ自体も1962年(昭和37)、70年、80年など、数次にわたって改正されることになった。そこでは、前述の自作農主義に立脚する農地法の基本理念は曲がりなりにも保持されながら、現実にはそれが薄められていったといってよい。改正の基本的方向は、自作農の農地取得の最高面積制限を緩和・撤廃したり、農地の賃貸借を漸次拡大することによって、農地の利用を自立経営(中核的農家)にできるだけ集中していき、それによって経営規模の拡大、日本農業の構造改善、効率化・近代化を図ることにあった。
 1962年(昭和37)の改正では、
(1)自立経営を育成するために、従来の農地の権利獲得の最高面積制限(都府県で3ヘクタール)の緩和、
(2)農業生産法人制度の法認、
(3)農業協同組合(農協)による農地信託制度の創設、
などが盛り込まれた。1961年制定の農業基本法の理念に沿って、自作地を基軸に農地の流動化を図り、共同経営、農業生産法人の設立を促進することをねらったものであった。
 1970年(昭和45)の改正では、内容が大幅に変更され、重要かつ画期的なものとなった。従来の自作農主義を後退させ、農地賃貸借の促進によって日本農業の効率化・近代化を図ろうとした画期的なものであった。そのおもな内容は、以下のとおりである。
(1)農地の権利取得の最高面積制限を廃止し、あわせて下限面積を引き上げて経営規模の拡大を図る。
(2)農業生産法人の要件を緩和し、その促進を図る。
(3)借地による農地流動化を促すため、賃貸借についての従来の規制を緩和する(小作料の最高額統制を廃止し、小作料の変更請求をしやすくするなど、地主側の権利を強めて農地を貸しやすくする)。
(4)農地流動化を促進するため、農業協同組合による経営受託事業や農地保有合理化法人による保有合理化事業を導入する。
 さらに、農地法を前提とした農地流動化、農業の効率化・近代化には限界のあることが明らかになった。また前述のように、米の過剰に伴う減反や過疎化による不作付地の増大、都市化に伴う地価高騰、農地荒廃といった新たな問題が発生するに及んで、農地法のバイパスとして新たな農地関連法を制定しつつ、農地の保全とその有効利用、また農地流動化による農業構造の改善を図っていく必要に迫られることになった。その後の経過の下で、バイパスである一連の農地関連法が整備、拡充されるなかで、農地法自体の役割は低下した。
 その一例として、1975年には農業振興地域の整備に関する法律(通称農振法、1969年制定)が改正された。市町村が農地利用増進事業を行い、一定区域内の農用地について集団的に利用権(一定期間の賃貸借など)を設定する道が開かれ、その設定については「農地法の適用外」として農地流動化の促進が図られた。こうして、農地法をすり抜ける形での賃貸借の拡大、それによる農地の有効利用と経営規模の拡大が図られることとなったのである。
 1980年(昭和55)には、農振法のなかの農用地利用増進事業だけを抜き出して、これを拡充発展させるべく、単独立法である農用地利用増進法が制定された。同時に農地法も一部改正され、従来の小作料の定額金納制については、農地委員会の承認があれば物納を認めることとした。これも零細農家から農地を放出させて規模拡大に振り向けるべく、従来の農地法の規制を緩めたものであった。
 さらに、1989年と93年にも一連の農地関連法が制定された。1989年には、かけ声だけでいっこうに成果のあがらない農業構造の改善をさらに加速し、かつ過疎化、高齢化、農地荒廃が進むなかで困難の度を増す中山間地域の活性化(農地の多面的利用)を図るべく、
(1)農用地利用増進法の改正、
(2)特定農地貸付法の制定、
(3)農振制度の運用改善と農地転用の許可基準の緩和についての通達、
が行われた。また、93年には、経済のグローバル化が進展するなか、「経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体」を育成するため、農用地利用増進法の抜本的改正を中心に、農地法、農協法など七つの関連法が改正された。あわせて、新たに農業経営基盤強化のための関係法律の整備に関する法律(農業経営基盤強化促進法)が制定された。さらに、中山間地域をはじめ、農村地域対策を推進するため、特定農山村地域活性化法が制定された。これらは、農地利用の促進による地域活性化と、農地利用の流動化の促進による日本農業の構造改善の推進を目ざしたものといえる。
 1952年(昭和27)の農地法制定時には、農業の担い手として「その地域に居住し、自ら耕作に従事する農業者」からなる農家が想定され、そのような農業者こそが農地の所有権や利用権を取得し保有しうるものとされてきた。その考えは、曲がりなりにも第二次世界大戦後長い間にわたって維持されてきたといってよい。しかし、1960年代以降、農業の担い手はしだいに多様化し、畜産や施設園芸といった分野をはじめとして、有限会社や各種の法人経営など、農家でない企業的経営が形成され、それが農業生産のかなりの比重を占めるまでになってきた。こうしたなかで、90年代なかばごろになると、財界などから「農地法の拠ってたつ耕作者主義の見直しに着手すべきだ」、「株式会社にも農地を取得する権利を認めるべきだ」といった意見が公にされるようになった。これを受けて農林水産省は1998年(平成10)12月、農政改革大綱を決定した。そのなかで、それまで農業法人として認められていなかった企業については、「農業生産法人の一形態としての株式会社」に限り認めるとした。一定の条件の下で株式会社の農業参入の道を開くことになり、2000年11月、「改正農地法」が成立した。[暉峻衆三]
『原田純孝著『農地制度を考える――農地制度の沿革・現状と展望』(1997・全国農業会議所) ▽関谷俊作著『日本の農地制度』(1981・農業振興地域調査会)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

のうち‐ほう ‥ハフ【農地法】

〘名〙
① 農地に関する法の総称。
② 農地改革完了後、昭和二七年(一九五二)制定された法律。農地は耕作者自ら所有するのが最も適当であるとの考えのもとに、耕作者の農地取得の促進、その権利の保護、農地の利用関係の調整などを図ることを目的とする。

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世界大百科事典内の農地法の言及

【農用地区域】より

…農用地区域内ではその地域の一体としての農業の振興を図るために,農地の転用制限を含む農業の保護措置がとられている。なお1975年に農振法の一部改正が行われ,未利用農地の活用と利用の集積を図るために,農用地区域内において市町村が農用地利用増進計画を定め,農地法の制約を受けることなく農用地の利用権を設定・解除できるようになった。これは農用地利用増進法(1980)に引きつがれ,農地の流動化はいっそう進められることになった。…

※「農地法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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