改訂新版 世界大百科事典 「自殖性植物」の意味・わかりやすい解説
自殖性植物 (じしょくせいしょくぶつ)
autogamous plant
おもに自殖によって生殖する被子植物のこと。自殖率はおおむね高いが,植物によっては90%を下回ることもある。同一個体内での受精を自家受精といい,この形式による生殖を自殖という。自家受精は雌花と雄花が別々になっている雌雄異花のときに起こる受粉(隣花受粉)と,一つの花の中に雌雄器官がそろっている両全花のときに起こる受粉(同花受粉)との2種類の形式で生ずる。しかし,雌雄異花のばあいは他殖率のほうが高いので他殖性植物に該当する。自殖性植物は両全花をもち,しかも自家不和合性でない種類の植物に限られる。また,同一花内の花粉と子房がほぼ同一時期に受精能力をもつように花器が発育する雌雄同熟の性質もあわせて自殖性植物には必要である。自殖率の高い植物としてはイネ,コムギ,オオムギ,ダイズ,ナスなど,自殖率がやや低い植物としてはワタ,ソラマメなどがある。
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報