改訂新版 世界大百科事典 「自由帝国主義」の意味・わかりやすい解説
自由帝国主義 (じゆうていこくしゅぎ)
liberal imperialism
19世紀末葉から20世紀初頭にかけてイギリス自由党内に生まれた一部の思想・主張をいう。グラッドストンの引退後,ローズベリー伯(1894-95首相),R.B.ホールデーン,E.グレー,H.H.アスキス(1908-16首相)ら一部の自由党議員は,イギリス帝国の統合に強い関心を寄せるようになり,自由帝国主義者と呼ばれた。1899年のボーア戦争の勃発に際して,親ボーア的な党主流派に抗して戦争を肯定し,以後党内に一派閥を形成した。彼らの主張は,イギリス帝国の統合を帝国主義時代の最も重要な政治課題として認識し,その上に自由主義と自由党を再編成していくというもので,帝国官吏を養成するための国民教育,行政の合理化,国家による保健衛生の普及などを骨子とする〈国民効率〉の運動を推進した。1902年,彼らは,ローズベリー伯を盟主に自由連盟Liberal Leagueと呼ばれる組織をつくったが,これには,フェビアン主義者のシドニー・ウェッブも加わった。だが,その後,J.チェンバレンの関税改革に党主流派ともども反対するなど,しだいに派閥としての特色を失い,10年,ローズベリー伯が自由連盟の盟主を引退するに及んで消滅した。
執筆者:村岡 健次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報