興福寺仏師職(読み)こうふくじぶっししき

改訂新版 世界大百科事典 「興福寺仏師職」の意味・わかりやすい解説

興福寺仏師職 (こうふくじぶっししき)

仏師職ともいう。平安中期の11世紀前半に活躍した定朝によって職業仏師としての地位が確立して以後,奈良や京都などの大寺院には仏師がおり,仏所が置かれた。興福寺では定朝の子孫覚助,頼助,康助らが大事業のたびに大仏師に任ぜられたが,鎌倉時代初頭に彼らの系統に属する成朝せいちよう)の代になって,寺院の職制(組織)として大仏師職が確立され,社会的にも認められることとなる。興福寺大仏師職はもっとも早い大仏師職の例で,1186年(文治2)に成朝が任ぜられていると称した記録(《吾妻鏡》)が初見である。その系譜は明らかではないが,鎌倉末期に性慶,康俊,その子康成,俊慶があり,14世紀半ばごろから湛勝,順慶,寛慶,さらに慶秀,舜慶,湛誉など慶派やその分派の仏師が任ぜられている。奈良地方の仏師の中心となるもので,他の寺社に仏師職を置く場合も興福寺との兼務とされ,補任の大仏師は〈南京〉〈南都〉などと頭書することが多い。また絵仏師が大仏師職に補任されることもあり,その場合,彫刻の仏師は木仏師職と呼ばれた。彼らはともに一定の領地俸禄をうけた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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