舌出三番叟(読み)しただしさんばそう

改訂新版 世界大百科事典 「舌出三番叟」の意味・わかりやすい解説

舌出三番叟 (しただしさんばそう)

歌舞伎舞踊長唄清元本名題再春菘種蒔(またくるはるすずなのたねまき)》,略称《志賀山三番叟》《種蒔(たねまき)三番叟》。1812年(文化9)江戸中村座で,三番叟を3世中村歌右衛門,千歳を4世中村明石(のちの12世勘三郎),翁を4世中村七三郎で初演。作詞2世桜田治助。作曲2世杵屋正次郎,伊藤東三郎。現行は千歳と三番叟の踊り。初世中村仲蔵が踊った志賀山流の代表曲《寿世嗣三番叟》に拠って作られ,〈目出とう栄屋仲蔵を〉で舌を出すところが題名の由来。いわゆる〈仲蔵振り〉を伝えている。各流にあるが,振りは若干異なる。
三番叟物
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の舌出三番叟の言及

【三番叟物】より

…その嚆矢は寛永年間(1624‐44)に猿若勘三郎(初世中村勘三郎)が踊った《乱曲三番叟》とされ,のちに志賀山流の流祖志賀山万作に伝えられて《志賀山三番叟》となり,志賀山流を継いだ初世中村仲蔵が1786年(天明6)に《寿世嗣三番叟》の名で復活させた。1812年(文化9)中村座における仲蔵二十三回忌追善に3世中村歌右衛門が踊った《再春菘種蒔(またくるはるすずなのたねまき)》(長唄,清元)は,この系統をひくもので,〈目出とう栄屋仲蔵を〉のくだりで舌を出すところから《舌出三番叟》の通称で,今日もたびたび上演されている。このような洒落っ気のある三番叟物は,《操三番叟》(本名題《柳糸引御摂(やなぎのいとひくやごひいき)》,長唄)のように操り人形の趣向で踊るもの,《四季三葉草(しきさんばそう)》(清元)のように千歳を女にするものなどがあり,さらには《廓三番叟》(長唄)のように傾城が翁,新造と幇間が千歳と三番になる茶番的な発想まで生まれる。…

【長唄】より

…この期には俳優にも3世坂東三津五郎,3世中村歌右衛門など兼ねる役者に名人が現れ,変化物(へんげもの)舞踊が流行した結果,長唄も短編ではあるが変化物に《越後獅子》《汐汲(しおくみ)》《小原女(おはらめ)》などの傑作が生まれた。また,伴奏音楽の面でも変化の妙を示そうとして豊後節系浄瑠璃(常磐津,富本,清元)と長唄との掛合が流行したのもこのころで,《舌出三番叟(しただしさんばそう)》《晒女(さらしめ)》《角兵衛》などが掛合で上演された。さらにこの時代には,舞踊の伴奏音楽という制約から離れた鑑賞用長唄(お座敷長唄)が誕生した。…

※「舌出三番叟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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