舌咽神経痛(読み)ぜついんしんけいつう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「舌咽神経痛」の意味・わかりやすい解説

舌咽神経痛
ぜついんしんけいつう

舌咽神経感覚過敏を特徴とするまれな疾患である。食事中や会話中などに突然、発作性に片側扁桃(へんとう)、咽頭、舌根部あるいは耳に激しい痛みがおこるが、そのほかには特別の所見は見当たらない。痛みは数分あるいは数時間で消退するが、発作を繰り返す。40歳以上の成人に好発する。耳に痛みがおこるのは外耳や中耳にも舌咽神経の枝が分布しているためで、これを投射性耳痛という。治療は、他の神経痛と同じように鎮痛剤や抗けいれん剤が有効であるが、薬剤が無効で痛みが激しい例には舌咽神経のアルコールによる神経ブロック、ときには神経切断の手術を行う。

 なお、近年は頭蓋(とうがい)内血管の圧迫が主要因と考えられる場合には、その圧迫部分を排除して神経を開放する脳外科手術も試みられている。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の舌咽神経痛の言及

【神経痛】より

…すなわち,(1)痛みは当該神経の支配領域に生じ,その神経走行に沿った圧痛がある,(2)痛みは発作性,反復性であり,激烈であるが持続時間は短い,(3)痛み発作を誘発する引金部位trigger zoneのみられることがある,(4)間欠期には症状は消失している,(5)他覚的に異常所見が認められないことが多い,(6)病理学的異常所見を伴わない,などである。 これらの診断基準をすべて満足する原因不明の特発性神経痛が狭義の神経痛で,三叉(さんさ)神経痛,舌咽神経痛などが知られている。これに対して,外傷,圧迫,炎症,感染,中毒,代謝障害など明らかな原因によって生ずる場合は,症候性神経痛と呼ばれ,日常,神経痛といわれる場合は,この症候性のことが多い。…

※「舌咽神経痛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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