日本大百科全書(ニッポニカ) 「舌咽神経痛」の意味・わかりやすい解説
舌咽神経痛
ぜついんしんけいつう
舌咽神経の感覚過敏を特徴とするまれな疾患である。食事中や会話中などに突然、発作性に片側の扁桃(へんとう)、咽頭、舌根部あるいは耳に激しい痛みがおこるが、そのほかには特別の所見は見当たらない。痛みは数分あるいは数時間で消退するが、発作を繰り返す。40歳以上の成人に好発する。耳に痛みがおこるのは外耳や中耳にも舌咽神経の枝が分布しているためで、これを投射性耳痛という。治療は、他の神経痛と同じように鎮痛剤や抗けいれん剤が有効であるが、薬剤が無効で痛みが激しい例には舌咽神経のアルコールによる神経ブロック、ときには神経切断の手術を行う。
なお、近年は頭蓋(とうがい)内血管の圧迫が主要因と考えられる場合には、その圧迫部分を排除して神経を開放する脳外科手術も試みられている。
[河村正三]