良妻賢母主義(読み)りょうさいけんぼしゅぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「良妻賢母主義」の意味・わかりやすい解説

良妻賢母主義
りょうさいけんぼしゅぎ

良妻賢母主義とは狭義には第二次世界大戦前の日本の女子教育理念をさし、それは1899年(明治32)の高等女学校令公布によって確立した。ただ、良妻賢母の育成という女子教育のあり方を「男は仕事、女は家事育児」という性別役割分業に根ざすものととらえれば、良妻賢母主義は、戦前日本に限らず、近代社会に広範に存在する女子教育理念であるということができる。良妻賢母主義が確立したことによって女子中等教育普及がうながされたが、他方でそれは、良妻賢母育成のための教育という、教育内容や教育レベルの限定をもたらすことになった。その結果、戦前においては中等教育段階以降における男女別学体制が維持され、中等教育における教育内容の男女差や女性の高等教育機会の制限が制度として存在していた。このような教育制度上の男女差別戦後の教育改革によって改善されたが、戦後社会においても性別役割分業観は存続し、それに基づいた教育も行われている。

[小山静子]

『小山静子著『良妻賢母という規範』(1991・勁草書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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