公布(読み)コウフ

デジタル大辞泉 「公布」の意味・読み・例文・類語

こう‐ふ【公布】

[名](スル)
一般に広く知らせること。弘布
訳者原書を訳して世に―し」〈福沢文明論之概略
成立した法令条約などの内容を広く一般国民に知らせるために公示すること。ふつう、官報に掲載される。「改正憲法を公布する」
[類語]告示公示公告宣告発布布告告知宣布触れ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「公布」の意味・読み・例文・類語

こう‐ふ【公布】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 広く一般に知らせること。書物などを世間に発表すること。
    1. [初出の実例]「訳者は原書を訳して世に公布し」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉六)
    2. [その他の文献]〔説苑‐至公〕
  3. 法令などを一般国民に公表すること。ふつう、官報などの政府定期刊行物に掲載される。
    1. [初出の実例]「天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命ず」(出典:大日本帝国憲法(明治二二年)(1889)六条)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「公布」の意味・わかりやすい解説

公布 (こうふ)

すでに成立した法令等を国民一般に表示する行為。近代法治国では,一定の国家機関によって制定された法令は原則として公布された後にはじめて施行されるので,公布は法令の効力発生要件である。日本国憲法は,憲法改正,法律,政令および条約の公布を天皇国事行為とし,内閣の助言と承認によりこれを行うと定めている(7条1号)。その他の法形式として,省令,最高裁判所規則などはそれぞれの制定機関によって,条例は地方公共団体の長によって公布される。しかし,議院規則のような特定の機関の内部規律に関する事項を定めるものについては,国民の権利・義務に関する通常の法規とは異なるところから,公布は必要とされない。

 公布の時期については,憲法改正は国民の承認があればただちに(日本国憲法96条2項),法律は最後に議決した議院議長から内閣を経由して奏上し,この奏上の日から30日以内に(国会法65条1項,66条),一つの地方公共団体のみに適用される地方自治特別法(日本国憲法95条)は住民投票で同意を得たことが確定したらただちに(地方自治法261条5項),また,条例は,その制定または改廃の議決があったときは議会の議長は3日以内に長に送付し,長は再議その他特別の措置を講ずる必要がないと認めるときは20日以内に(16条1,2項),それぞれ公布することを要する。政令および条約については公布の時期の定めがないが,いずれも具体的な公布期日は内閣が決定すべきものとされている。

 法令の公布の方式については,明治憲法下の公式令の廃止後,一般的な法律が制定されていないが,学説および最高裁判例(1957)は,原則として官報に登載することによってなされるとしている。法令がいつ公布されたものとみるべきかについては,最高裁判例(1958)は,法令が登載された官報を一般国民が閲覧または購入しようとすればそれをなしえた最初の時点としている。法律,政令および条約の公布に際しては,天皇の御名・御璽にそえて内閣総理大臣副署のある公布文を付するのが例となっている。法律は,法律に別段の定めがないときは,公布の日から満20日を経て施行されるが(法例1条1項),現在では一般に各法律の付則施行期日が定められている。なお,法律・政令にはすべて主任の国務大臣が署名し,内閣総理大臣が連署する(憲法74条)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「公布」の意味・わかりやすい解説

公布
こうふ

すでに成立した新しい法令を広く一般人が知ることができる状態におく行為。日本国憲法は,憲法改正,法律,政令および条約の公布を,天皇の国事行為としている (7条1号) 。これ以外の法形式については,制定機関が公布機関であることも,またそうでない場合もあり,必ずしも一定しない。法令公布の方式について一般的に定めた法律の規定はないが,官報に載せることによって行う慣例になっている。法令は施行によって現実に効力を発するが,公布は施行の要件である。法令は公布より一定期日後施行されるのが原則であるが,公布とともに施行される場合も少くない。法律と条例の公布時期については制限がある (国会法 65,66,地方自治法 16) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「公布」の意味・わかりやすい解説

公布【こうふ】

成立した法令等を国民に知らせる公式の手続。日本では憲法改正・法律・政令・条約の公布は天皇の国事行為に属する。公布は官報その他の定期刊行物に掲載することによってなされ,公布した後に施行されるのが原則である。
→関連項目官報法律

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「公布」の意味・わかりやすい解説

公布
こうふ

成立した法令を国民に知らせるために公示すること。法令はすべて公布され、公布がなければ法令の効力は発生しない。憲法改正、法律、政令、条約の公布は天皇の国事行為として行われる(憲法7条1号)。明治憲法時代にあった公式令が廃止されたため、現在、公布の方法に関する規定はないが、最高裁判所の判決で、公布は原則として従前どおり官報によってなされると限定された。法令公布がいつなされたかという時期の点についても、最高裁判所は、その法令を掲載した官報が全国の官報販売所に発送されて、いずれかの販売所で閲読可能になった最初の時点で公布があったものと解すると述べ、全国同時施行主義をとることに決めた。

[池田政章]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「公布」の読み・字形・画数・意味

【公布】こうふ

公示。

字通「公」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android