すでに成立した法令等を国民一般に表示する行為。近代法治国では,一定の国家機関によって制定された法令は原則として公布された後にはじめて施行されるので,公布は法令の効力発生要件である。日本国憲法は,憲法改正,法律,政令および条約の公布を天皇の国事行為とし,内閣の助言と承認によりこれを行うと定めている(7条1号)。その他の法形式として,省令,最高裁判所規則などはそれぞれの制定機関によって,条例は地方公共団体の長によって公布される。しかし,議院規則のような特定の機関の内部規律に関する事項を定めるものについては,国民の権利・義務に関する通常の法規とは異なるところから,公布は必要とされない。
公布の時期については,憲法改正は国民の承認があればただちに(日本国憲法96条2項),法律は最後に議決した議院の議長から内閣を経由して奏上し,この奏上の日から30日以内に(国会法65条1項,66条),一つの地方公共団体のみに適用される地方自治特別法(日本国憲法95条)は住民投票で同意を得たことが確定したらただちに(地方自治法261条5項),また,条例は,その制定または改廃の議決があったときは議会の議長は3日以内に長に送付し,長は再議その他特別の措置を講ずる必要がないと認めるときは20日以内に(16条1,2項),それぞれ公布することを要する。政令および条約については公布の時期の定めがないが,いずれも具体的な公布期日は内閣が決定すべきものとされている。
法令の公布の方式については,明治憲法下の公式令の廃止後,一般的な法律が制定されていないが,学説および最高裁判例(1957)は,原則として官報に登載することによってなされるとしている。法令がいつ公布されたものとみるべきかについては,最高裁判例(1958)は,法令が登載された官報を一般国民が閲覧または購入しようとすればそれをなしえた最初の時点としている。法律,政令および条約の公布に際しては,天皇の御名・御璽にそえて内閣総理大臣の副署のある公布文を付するのが例となっている。法律は,法律に別段の定めがないときは,公布の日から満20日を経て施行されるが(法例1条1項),現在では一般に各法律の付則で施行期日が定められている。なお,法律・政令にはすべて主任の国務大臣が署名し,内閣総理大臣が連署する(憲法74条)。
執筆者:中島 茂樹
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成立した法令を国民に知らせるために公示すること。法令はすべて公布され、公布がなければ法令の効力は発生しない。憲法改正、法律、政令、条約の公布は天皇の国事行為として行われる(憲法7条1号)。明治憲法時代にあった公式令が廃止されたため、現在、公布の方法に関する規定はないが、最高裁判所の判決で、公布は原則として従前どおり官報によってなされると限定された。法令公布がいつなされたかという時期の点についても、最高裁判所は、その法令を掲載した官報が全国の官報販売所に発送されて、いずれかの販売所で閲読可能になった最初の時点で公布があったものと解すると述べ、全国同時施行主義をとることに決めた。
[池田政章]
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