荒玉の・新玉の(読み)あらたまの

精選版 日本国語大辞典 「荒玉の・新玉の」の意味・読み・例文・類語

あらたま‐の【荒玉の・新玉の】

語義、および、かかり方未詳。
① 「年(とし)」「月(つき)」およびこれらを含む語にかかる。のちには「春」「一夜」にかかる例もある。
古事記(712)中・歌謡「阿良多麻能(アラタマノ) 年が来経れば 阿良多麻能(アラタマノ) 月は来経(きへ)行く」
※恵慶集(985‐987頃)「あらたまの一夜ばかりをへだつるに風の心ぞこよなかりける」
② 「きへ」にかかる。
万葉(8C後)一一・二五三〇「璞之(あらたまの)寸戸(きへ)竹垣(たかがき)編目ゆも妹し見えなば吾恋ひめやも」
[語誌](1)「万葉集」では、「璞」の字、また「あら」に「荒」「麁」「未」、「たま」に「玉」「珠」の文字のみが用いられ、「荒玉」①の意が強く感じられる。そこで、①は荒玉をみがく砥(と)の意で、同音の「と」を含む「年」にかかるとか、荒玉に角があるところから「鋭(と)し」と同音の「年」にかかるとかいわれ、そこから「月」などにも転用されたと説かれる。この説は「と」が「砥・鋭し」では甲類音、「年」では乙類音で異なるという難点がある。そのほか、地名の「あらたまのきへ」がもとで、「来経行く年」の続きを媒介として「年」に続くようになったという説も出されているが、定め難い。
(2)②は、「阿良多麻能(アラタマノ)来経(きへ)行く年の限り知らずて」〔万葉‐八八一〕、「阿良多麻乃(アラタマノ)来経行く年を年久に」〔熱田太神宮縁起〕のように、「来経行く年」の続きから生じたものと考えられるが、「万葉‐三三五三」の「あらたま」は遠江国の郡名として、枕詞とは見ない説〔冠辞考〕も有力である。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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